いわにし日記

「いわにし」の取るに足らない日常や思いつき

ウインナーコーヒーは食べる?飲む?

コートを脱ぎ(背伸びして買ったので、近場の外出でもなるべく着るようにしている)、席に着く。

タイミングよく店員がやってきて、おしぼりとお冷やを渡してくれる。タイミングがいいのではなく、タイミングを合わせて席にきてくれていたのだと気がついたのは、他の席の様子を見たときだった。

 

前回の訪問から5日。ルノアールの居心地の良さが気に入った僕は、早速再訪をした。

「ご注文はお決まりですか?」

前回のように聞いてくれたら、ホットコーヒーをお願いします、と伝えてくつろぐことができた。

「ご注文がお決まりの頃にまた来ます。」

前回とは違う聞き方をされてしまった。

 

行くなよ!

どこにも行かないでくれよ!

俺のそばにいてくれよ!

 

人は一生のうちに何度か遭遇する。男らしさを見せ、強引にでも相手を引き止めるべき瞬間に。

その手を離してしまえば二度と自分の元へは戻っていこない。その笑顔が自分に向けられることは二度とない。

 

メニューを開き、上から順に眺めて行く。店員からの声かけに対して、首を縦に振ってしまったのだ。

 

コーヒー(ブレンド)590円

ウインナーコーヒー 620円

ミルクティー/レモンティー 610円

ロイヤルミルクティー 660円

カフェラテ 710円

 

食べる気は無いトーストやケーキの値段もチェックして、メニューの先頭に戻る。とても悩ましい、どうしたものか。

紅茶の気分じゃないし、カフェラテの気分でもない。ウインナーコーヒーに至ってはどんなものかわからない。

 

じっくりとメニューを見た後にコーヒーを頼むのは気が引けた。

コーヒーを頼むなら最初だったな、と悔しくなる。あのとき、強引にでも店員を引き止めていれば。

一番安い、ということに引っかかってしまう。じっくりとメニューを見た後に注文してもいいのだろうか?

 

決して中を覗かないでくださいね…。

襖一枚隔てた鶴からのお願いじゃあるまいし、メニュー表の中を確認した後にだってコーヒーは頼んでいいはずだ。たとえ食べる気のないケーキのラインナップを確認していたとしても。

 

他のメニューを選んでもコーヒーを選んでも、飲み物の注文であることに違いはない。ドリンクメニューならば何を注文したって100円程度の違いしか生まれない。

忘れないでもらいたいのは、一番安いメニューを選んでも590円だということ。

 

安くはない。

決して安くはない。

選ぼうとしたコンビニ弁当が590円だったら基本的には棚に戻す(個人差があります)。

そういう値段。

590円はそういう値段。

 

何を注文したって変わらない。作るのが面倒くさいメニューでなければ、たぶん店員はなんとも思わない。

コーヒーだけの客は多いし、メニューを見てからコーヒーを注文する客も多い。氷の準備が必要ない分、アイスコーヒーを注文する客よりもほんの少し歓迎される注文になっている可能性だってある。

 

なーんちゃっての冗談ではなく、真剣に悩んでしまう。なんとも思っていないと考えることは、都合のいい解釈なのではないか。都合が良すぎるのではないか。

どうしてそう思うのかを考える。

考えて考えて、考える。

すぐに思い当たる。すぐに思い当たるからこそ、振り払って別の可能性を考えて、諦める。結局最初の答えに帰ってくるのだ。

「自分が店員ならそう思うから」

 

アイスなのかクリームなのか。メニュー表の写真では分からなかった白い渦巻きがホイップクリームであることはわかった。実物が目の前に来て新たな疑問が湧く。

 

クリームはすくって食べればいいのだろうか?

コーヒーと混ぜ…ない?

メロンクリームソーダ的に召し上がればよろしくて?

メロンクリームソーダってどうやって食べたっけ?

 

答えが見つからない時間が進む。クリームは少しずつ溶けていく。

クリームをスプーンですくって食べる。大きくすくって食べる。コーヒーを飲み、またクリームを食べる。

大きな動きで食べ進める。

正解はわからないけれど、堂々と。これが私の召し上がり方ですけど、と。

迷いの存在に気がつかれてはいけないのだ。

 

「あの人、ウインナーコーヒー飲むの初めてなのかな?」

 

自分が店員ならそう思うから。