いわにし日記

「いわにし」の取るに足らない日常や思いつき

幕は開けた

薄っぺらいリュックにスニーカーで駅に向かう僕とは大違いだ。

 

サラリーマンはとても忙しい。


駅に向かうのにスーツを着て革靴を履いて、スマホ眺めて音楽聴いて、タバコ吸ってる。

ブラックっていうのは働いている会社のことじゃなくて、あなたの肺の話?

 

どういうわけだか、歩きタバコに対してはやたらと腹が立つ。喫煙をしないし、タバコそのものが嫌いっていうのもあるけど、歩きタバコに反応をするのはそれとは別の部分。

 

ルールを破っているから。だから腹が立つのだろうか。


それはそうだけど、それ以上に反応してしまう。もっと強い反応。

 

ズルばっかりしている奴が要領よく立ち回って店長に好かれている感じ?ただでさえシフトが一緒になるとうんざりなのに、そいつだけ気に入られて時給上がってるときの、心のくしゃくしゃ感。

 

この包丁は魚を捌く時に使うもの。


ちゃんと言い聞かせないと、どうにか事故を装えないかと、脳が悪い計画を心に持ちかける。
折衷案として、魚にそいつの名前をつけて3枚におろす。

 

嫌いなことをしている(喫煙)人が、ルール違反をしている。その重なりで必要以上に反応をしてしまうのだろう。

 

歩きタバコをする人に携帯灰皿を持参している人ってどれくらいいるんだろう?


・・・そんなやついないか。

 

歩きタバコの時点でルール違反で、そこを堂々と実施しているんだから、まぁ持ってないだろうな。殺人鬼が数珠持って人殺しに行くようなもんだ。この度はご愁傷様です、って。

ない、ない。持っているわけがない。

 

僕のバイト先は店の内外に喫煙スペースがない。喫煙者はみんな店の駐車場で吸って、足元に捨ててから店に入ってくる。

ちゃんと靴底でぐりぐりして、火消しをしてから店に入ってくる人がまともに見えてしまう。
せめて携帯灰皿を持参しろよ。そもそも喫煙許可してないし。

 

いらっしゃいませ、の声は他のお客さんに言うよりも小さくしている。せめてもの仕返しだ。

 

色々な場所が禁煙になっていく。その度に喫煙者は肩身が狭くなった、と嘆く。防犯カメラが導入されて、昔の埼京線は痴漢しやすかったのに、って嘆いている人と同じようなもんだと思う。

 

喫煙者に厳しい世の中になっていくことを、迷惑をかけられている側が申し訳なく感じないといけないのだろうか。


狭い肩身でこれだけ自由にお吸いになる方々に、十分な場所や機会を提供しなくてはならないのだろうか。

 

道路上は全て喫煙スペースみたいなもんだ。灰皿が設置してある場所で吸っていても、灰皿に捨てていく人ばかりではない。足元に捨てていく人が大勢いる。
それだと喫煙スペースはタバコを吸っていることに文句を言わせないエリアでしかない。

 

文句を言われるエリアで吸って、文句を言わせないエリアで吸って、まだ足りないって言うのか…。
食べ盛りの中学生の息子に、おかわり!って言われるわけじゃないから、しょうがないねぇ、って頬を緩めて立ち上がるお母さんはどこにもいない。
万が一にもいてほしくない。

 

吸わないこっちにしてみれば、室内くらい禁煙にしてもらわないと逃げ場がない。

 

隣の客が喫煙者だった時の飯のまずさたるや。しょうもない人生送ってんだ。飯ぐらい気分良く食わしてくれよ。

 

新時代の到来を予感した。予感どころか、目撃だ。場所は近所のコンビニ。


サラリーマンが、漫画の立ち読みをしながらアイコスを吸っていた。

 

これから店に入ろうとしているのが僕。
店内にいるのがサラリーマン。

 

買った漫画を店の前で読みながらタバコを吸っているのならすぐに理解できる。ここのコンビニは灰皿がないけどね。

 

サラリーマンは、買ってない漫画を店内で読みながらタバコを吸っている。

すぐに理解ができなかった。

 

一歩一歩入り口の自動ドアに近づいているのが僕。そのはずなのに、僕が店外にいる感じがしなかった。俺がお前で、お前が俺でというかなんというか。物凄く気持ちが悪かった。変な感覚だった。

 

立ち読みをしながら、アイコスを吸っている…。注意しろよ、と店員に思う気持ちは全く湧かない。注意したらやめる奴は立ち読みのトッピングにアイコスを追加しない。

 

普通に怖い。そういう感覚の持ち主ってだけで、十分に怖い。家では優しいお父さん、会社では面倒見のいい先輩。そうだとしたらさらに怖い。

 

店員さん、正義感は売り上げ金と一緒に金庫にしまっておいて下さい。

 

ユーチューバーが、店員に注意されるギリギリを狙ったチキンレースにも見えない。どう見てもただの立ち読み。そこにアイコスのトッピング。

 

ルール違反…だよね?

 

あまりに衝撃的で歩きタバコを目撃した時のようには腹が立ってこない。

まだ日常に落とし込まれていない吸い方。

新時代の幕は開けた。