いわにし日記

「いわにし」の取るに足らない日常や思いつき

あるべき姿が楽しくなくて。

良いジーンズが欲しい。

そう思ったのは大学2年のことだ。

 

初めて購入した「良い」ジーンズはフラットヘッドの3003。検索バーに「ジーンズ アメカジ おすすめ」などと入力をして辿り着いた。

フラットヘッドを選んだことにデニム好きを納得させる理由はない。たまたまチェックした複数のサイトで、おすすめの上位として紹介されていたというだけだ。違うサイトをチェックしていればフェローズだったかもしれないし、フルカウントだったかもしれないし、FOB FACTORYだったかもしれない。

定番の3005ではなく3003を選んだのは、3003の方が太いシルエットだったからだ。当時の僕はジーンズは太くてなんぼと思っていた。 

 

それまで履いていたユニクロのジーンズ、ライトオンで買ったリーバイス(エドウィンだったかも)と決定的に違うところは、取り扱いに気を遣うところだ。

フロントがボタンフライになっているとか、生地がキバタだとか未防縮だとかそういうことじゃない。色々と調べていく中で知ってしまった洗濯と色落ちにまつわるエトセトラが僕を神経質にしてしまった。

 

ファーストウォッシュはいつで、セカンドウォッシュはいつなのか。

表のまま洗うのか、裏返して洗うのか。

洗濯の時間はどれくらい?洗いは何分?すすぎは何分?脱水は?水量は?

洗剤は何を使うの?やっぱりジーンズ専用洗剤?それとも水洗い?

 

色々な人のブログを見て色々な考え方に触れていく中で、どうやら「良い」ジーンズは「いつ洗うの?」が「今でしょ!」にはならないことを知った。

メリハリのきいた「良い」色落ちをさせるためになるべく洗わないようにしている人が多く、半年とか1年とか洗わない人もいるみたいだった。

チノパンだったら100%考えられないこの履き方を「そういうものなのかな…?」と思ってしまうあたりに自分の知識と経験のなさを実感した。

 

3ヶ月、1ヶ月、1ヶ月。自分なりに頑張ってみたけれど、自分の中での限界は3ヶ月だった。

半年、1年には遠く及ばない。

気持ち良く履き続けようと思ったら1ヶ月でもしんどいくらいだとわかった。

 

同時期にアルバイトでユニクロのジーンズを履いていた。メイドインジャパンデニムジーンズという耳付きのもので、ユニクロにしては高額だった(たぶん6,000円くらいした)。

こちらのジーンズは何も気にしないで履いていた。

バイトの出勤が週4日。1週間の勤務が終わったタイミングで洗いにかける。裏返して他の洗濯物と一緒に普通に洗っていた(洗剤はナノックス)。

 

対照的にフラットヘッドのジーンズは気を遣って履いていた。

週3日着用、最低1ヶ月は履き続ける。洗いは単独。裏返してジーンズ専用洗剤を使用する。

フラットヘッドの3003は、「良い」色落ちをさせるために、ネットで集めた情報を土台に自分にとって無理のない範囲で実践をした。

 

2つのジーンズを履き続けて1年が経過した頃、ユニクロのジーンズを好んで履いている自分に気がついてしまった。フラットヘッドと比べると生地に強度が足りない印象を受けていたが、気に入っているのは明らかにユニクロのジーンズの方だった。

 

フラットヘッドのジーンズを履くことは楽しくなかった(これは製品のクオリティの話ではなく、履き方・扱い方の話)。「良い」ジーンズは「こうするべき」「こうでなくてはいけない」とネットで集めた情報に雁字搦めにされていた。

「あるべき姿」に向かって正しくあろうとしすぎた結果、色落ちが進んでいくことに対して喜びを感じられなくなっていた。

 

特に何を気にするでもなく履いて洗ってを繰り返しただけのユニクロのジーンズは、すごく自然な色落ちをしていた。

メリハリのきいた色落ちとは呼べないし、そういう色落ちを好む人から見ればダサい色落ちだったかもしれない。

ネットで集めた情報が作り出す「あるべき姿」からは遠く離れた色落ちになってしまったけれど、僕はとても気に入っていた。履き手の生活の先にしか現れない自然な姿だと思った。

 

今でも僕は1本で2万円とか3万とかの「良い」ジーンズを買って履いている。安物のジーンズと比べて何がどう「良い」のかなんて未だにわかっていないけれど、それで構わない。

履くことも、色落ちが進むことも楽しめているのだ。

「あるべき姿」というものが存在しているとすれば、それはきっと自分が楽しめる方法で履いたジーンズの成れの果てのことを指している。「こうするべき」「こうでなくてはいけない」といった誰かの方法論の先には待っていない。