いわにし日記

「いわにし」の取るに足らない日常や思いつき

はじめてのセーター

セーターが欲しい。

自分の中に初めての気持ちが芽生えた。

芽生えたものを、育てる前にまず掘り起こす。観察することでみえてくるものがある。

 

「スウェットではないんだよなぁ…」という今の自分の感覚。セーターに対するときめき(期待)よりも、こっちの方がはるかに強い。

近いのは「他に好きな人が出来たというよりも、別に付き合ってる必要性を感じなくなった」という感覚だ。

「悪いところがあったら直すと言われても、嫌になったわけではないし、冷めたわけでもないし。そういうんじゃないんだよね。」

そういう感覚。

自分の経験と一切共鳴していないけれど、そうだとわかる。

シルエットとか編み方とかをいくら改良されても、よりを戻すことはできない。

私の気持ちは「スウェットではないんだよなぁ…」ただそれだけだ。

 

お世話になっているお店のインスタグラムをチェックする。お世話になっているといっても、まだ1年程度の付き合いだ。大勢いる客の中の1人でしかないし、いつ姿を消してもがっかりされることのない細客だ。

細いだけならまだしも、ダサい(むしろ早く消えて?)。

お店に迷惑をかけたくないので、この先何度話題にあげたとしても、絶対に店名は明かさない。

 

2度目ましては初めましての5ヶ月後だった。

予約していた商品の入荷連絡をお店の方からもらった。連絡をしたのは店側だから、そのうち僕が来ることは予想していただろう。

とはいえ、だ。

とはいえ、5ヶ月前に一回来ただけのやつの顔なんて覚えていられるだろうか?

自分のバイトに当てはめてみれば、本気で嫌いな客の「いつもの」注文は覚えているけれど、常連さんの「いつもの」はあやふやだ。思い出せるかどうかはそのときになってみないとわからない。出ないときは全くでない。

覚えているくらいダサかった。忘れられないくらい店の雰囲気に合ってない客だった。優秀な店員さんだった。

3番目以外の理由なら深追いはしない。3番目かどうかすら追及しない。

3番目でないことがわかった時点で傷つくことが確定してしまう。

店員さんの方が5ヶ月後の2度目ましてで「どうも〜」だったので、3度目以降は僕も「どうも〜」の感じでお邪魔させてもらっている。

 

最近の投稿の中にその写真はあった。

春夏モデルのコットンニット。

春夏用の厚みや素材だから春夏モデルなのか、春夏モデルとして発売された通年用なのか。細かいことはてんでわからないけれど、投稿を見て、いいなと思った。

今の自分の感覚とも合致する。

 

「違うな」試着をしてからそう思ってしまった時のために、代わりに買う物を決めて部屋を出た。イメージと違ったからといって手ぶらでは店を出られないのだ。

店に入った瞬間に客が自分1人だとわかると、コンビニですら何も買わずに退店できない。

厄介なことに服屋では「相手をしてもらっている」という感覚がより強くなる。劣等感、ってやつは…まったく。

 

今までニットは着てこなくて…スウェットばっかりで…挑戦してみたくて…。

言い訳を散りばめながらセーターを試着した。

「このニット(お洒落な人たちはニットと呼ぶのが主流?)すごくシルエットが綺麗で、ただ着るだけでも上品に仕上がりますよ。」店員さんの説明を聞きながら鏡を見る。

いい、すごくいい。

シルエットの良し悪しなんて全くわからないくせに「おぉ、いいなぁ」と思った。

何がどういいのかを一切説明できないのに、だ。

 

着て、鏡を見て、気に入って、悩む。

「買います、これでお願いします。」どのタイミングで言ったらいいのだろうか?

着てすぐの場合、「こんなちょっとの時間で何がわかるんだよ」と思われそうで言い出せない。

時間をかけた場合、「このニットの良さをすっと感じられないの?」と思われそう。これはこれで避けたい。

気に入ったタイミングでは早すぎたので少し時間稼ぎをした。

なんとなく腕を上げて袖の長さチェックをしてみたり、少し体をひねって後ろ姿を確認してみたり。袖はつっぱらなかったし、背中にカナブンは張り付いていなかった(部屋の中で気付いたときの恐怖たるや)。

 

帰宅して、すぐに着替えた。数時間前の感覚が急速に失われていく。「他に好きな人ができた」正直に言って許してもらうしかない。

ときめきが圧倒的に強くなった。