いわにし日記

「いわにし」の取るに足らない日常や思いつき

サバシェアリング

ツナ缶をまとめ買いした。

3個セットのツナ缶を10個まとめて。

店を出るときには既にビニール袋の持ち手が指に激しく食い込み、後悔ををしていた。

 

袋の中に入れるものが重くなるほど、袋の持ち手が指に食い込む力は強くなっていく。

そんなことはわかっている。だけど、スーパーにちょくちょく買い物に行くのは面倒臭い。コンビニには毎日のように行くのに、スーパーに毎日行くのはなんか面倒臭い。
なんでだろう?

 

意気込みとしてはコンビニに行くのとなんら変わらないのに、スーパーに毎日行くのは気が向かない。コンビニに行くよりも大きな負担を感じている。

 

広い店内と豊富な品揃えに対して、プレッシャーを感じているのかもしれない。

ペットボトルのお茶一本だけとか、ボンカレー1箱だけとかだと、レジに並んでいるときにそわそわしてしまう。カゴを使わないで店内を歩き回ると収まりの悪さを感じるし、カゴを使ってボンカレーとお茶だけだと、スカスカしていることが気になってくる。

 

自分の買うものがこれっぽちでいいのだろうかと考えて、気が重くなっているのかもしれない。コンビニではカゴを使わなくて平気だし、お茶一本でもボンカレー一箱でも平気でレジに行ける。

 

あぁ、そうか。スーパーはカゴを使って買い物をするところ、たくさん買うところ、と自分の中に刷り込まれている。だから、たいして買うもののない日に買い物に行くと負担を感じるのか。

週末に家族で出かけるところだったな、記憶を掘り起こせば。

 

ツナ缶をカゴに放り込みながら、こればっかりでレジに行くのは恥ずかしいな、と思い始める。

糖質制限を邪魔しない低糖質で高タンパクの缶詰を何か他に買って帰ることにした。

 

イワシ、サンマ、サバ、イカ、貝。魚介類は種類が豊富で、水煮と煮付けと味噌煮が定番の味付けのようだった。

 

成分表示を見ると、ダントツで水煮が低糖質。煮付けと味噌煮は、味付けの工程で糖質を多く含んでしまうようだ。
水煮だとイワシ、サンマ、サバが良さそうで、その3つの中で一番好きなサバの缶詰を買って帰った。

 

家に帰って、早速食べてみる。
ツナ缶を開ける時と同じように汁を捨てて、はっとする。DHAとかEPAとかをまるまる排水口にくれてやる大チョンボをしてしまった。


大切なことはいつだって失ってから気がつくもののようだ。親のありがたみや、上司への感謝、友の優しさ、鯖缶の汁に含まれている豊富な栄養分。

失う前に気がつけない私の愚かさたるや。

 

サバ缶は思っていた何倍もサバだった。サバそのものだった。もっとそれっぽいやつかと思っていた。かにかまとか、成型肉のローストビーフみたいなやつかと思っていたから驚いた。
肉厚で脂がのっていて、骨まで美味しく食べられる。


想像以上の美味しさで、すぐにまた食べたくなった僕は、面倒がらずに翌日また買いに行った。

 

しかし、翌日は買えなかった。昨日買いに行ったときに棚にぎっしり陳列されていたサバ缶が忽然と姿を消していた。
念のために棚の上に積んである在庫も探したけれど、そこにもなかった。

 

翌々日はサバ缶を求めて歩き回った(暇なフリーターのなせる技)。意地になってしまって、見つけるまで帰ることができなかったのだ。
どうしても食べたいというよりは、手ぶらで帰るのが嫌だった。それだけはどうしても避けたかった。

 

いつものスーパーに行って、前日同様にすっからかんの棚を確認する。他のスーパーまで足を延ばす。


ない、ない、ない。

マルエツにも、いなげやにもない。途中で見つけたウェルパークにもない。

 

随分とアパートから遠く離れてしまったので、その時いた場所から一番近くの駅を目指すことにした。確か駅の側に西友があったので、ここを覗いて最後にしようと思った。

 

西友の手前に駅直結のスーパーがあった。規模は西友よりかなり小さく、コンビニより一回り大きい程度。
当然ないだろうと思い、通り過ぎようとした。…したのだが、横目で見たときに押し戻された。


通り過ぎる直前、やっぱり入ろうと思った。後ろ髪を引かれるというか、黒のワンボックスカーに引きずりこまれるというか、なんというか。なんかものすごく強い力で引っ張られた。

 

缶詰コーナーの前にたどり着く。

ツナ缶が2種類、焼き鳥がタレ・塩それぞれ一種類ずつくらいしか置いていない中、なぜか探し回っていたサバの水煮缶があった。

 

やっと見つけた。

 

2日前に買ったサバ缶は、マルハニチロの月花シリーズの水煮だった。
それぞれの店のPOPで知ったのだが、このサバ缶はテレビや雑誌で紹介されていたらしい。それでこのシリーズばかり売り切れていたようだ。

最初の美味しかったやつ、に執着した僕は、探して歩き回るはめになった。

 

5軒目でやっと見つけたのはいいが、一体何個買っていいのか迷う。
目視で確認できたのは12個。この12個のうち、一体何個まで買っていいのだろうか。

 

探し回ってやっと見つけたものなので、1つ2つはあり得ない(労力に対して)。かといって、買い占めるのはそれはそれで後ろめたい。

まとめ買いはしたいけど、買い占めをしてはならない。

 

前にテレビで見た売れっ子ホストの言葉が脳裏に蘇る。

幸せはみんなでシェアした方がいいよね。

 

みんなでシェアした方がいい。きっと僕以外にもこのサバ缶を探し回っている人がいるはずだ。僕以外の人にも買える可能性をしっかりと残さないといけない。

 

僕ともう1人。こう考えるとなんかシェア感が薄い。だから、僕ともう2人でシェアするイメージで買う数を決める。

 

スーパーの閉店は25時。

僕が店内で考えていたときには24時30分を回っていた。閉店までは30分もない。


よし、決めた。

僕はサバ缶を6個カゴに入れた。


まとめ買いだけど、買い占めではないラインで、なおかつ他の人とのシェア感も残る。

 

残り30分で店に来た人が、6個まとめ買いをする可能性は低いと考えた。僕のように探し回ってまで買おうとする人は多くないだろうし、この時間ならその数はさらに少ないだろう。

つまみとして1〜2缶買う人がいるかどうかだろうと予測をした。

 

本当は予測でもなんでもなくて、等分は嫌だ、と考える僕の性根の悪さが出ただけかもしれない。
そうだとしても、最初に河原で見つけたやつが、みんなでそのエロ本を見るときにページをめくる主導権を握るように、先行者利益が多少はあってもいいんじゃないか?


先行者利益を確保した上で、後ろめたさを感じずにいられるように落とし所を探す。

それが6個だった。

 

アウトなのかな?
セーフなのかな?

 

もう気の遣い方がわかんない。
正解なんてあるのだろうか?


少なくとも、閉店までに来るかもしれない購入希望者に対して、僕としては十分なシェア精神を示したつもりだけど。

 

袋の中は6缶だから、ビニール袋はそれほど重たくなく、持ち手もそれほど強くは指に食い込まない。


そこそこ重かったのは、気持ちの方だった。