いわにし日記

「いわにし」の取るに足らない日常や思いつき

ポテト・テカリータ

ぎゅっと持った瞬間に、横からぴゅいとソースが飛び出す。僕の人差し指はもはや誰のことも差せない。

 

異議あり!と裁判長に人差し指を向けても、それがソースのついた指では裁判はひっくり返らない。

とっておきの秘策があっても、ソースのついた指で申し立てた異議では逆転できない。

 

ボーイズ ビーアン ビシャス!

未来に向けたその指先にハンバーガーのソースがついていたなら、少年は大志を抱けない。

 

前回のリベンジを果たすべく、近所のマクドナルドに僕は来ていた。今日は小一時間のんびりとすることが目的ではない。前回のリベンジを果たすことが目的だ。

そう、揚げたてのポテトを食べることが今回の目的。

 

ルール

1・偶然を引き寄せる

2・決して揚げたてを要求しない

 

ルールはこの2つ。

そして僕にできることは2の揚げたてを要求しないことのみ。揚げたてを要求する奴が心底嫌いだから絶対に違反しない。

 

完全に運任せだ。

レジ待ち客が何人いるかも、その人たちが何を注文するかもわからない。ポテトを注文するかもわからないし、注文したとしてもどのサイズかがわからない。

作り置きが何個あるか、箱に入れていないけど揚げ終わっているポテトがどれくらいあるのか。それすらもわからない。

 

要は、店に行って(普通に)注文をしたときに(偶然)揚げたてだったら僕の勝ち。リベンジ達成ということだ。

 

ん?ルール必要ないな。

 

店内にはレジ待ち客はいなかった。ちょうど注文を終えた客と、会計を終えて提供を待っている客4人の計5人。

 

これは不利だな、と思った。仮にレジ待ち客が4人だったとしても、変えることができるのは最後尾の客との距離くらいしかない。しかし、それすら手に入れることができず、レジに直行するしかない状況になってしまった。

変えられる何かは存在しない。

 

追い詰められてしまった。

レジに並ぶ以外に何もできない。

 

ポテトを頼まない、という選択肢はない。勝負から逃げ出すことになってしまうし、なんのためにここまで来たのか、って話になる。

頼まない、はない。

 

前回の記事(ポテト・テカリーヌ)を読んでくださった方には一言詫びねばならない。

 

…もう一回アイダホバーガーいっちゃいました。

アイダホの借りはテキサスで返すと宣言して記事を締めていたのですが、アイダホで返すことにしました。

 

オリンピックの借りはオリンピックでしか返せない。数多のトップアスリートが口にして来たこの言葉、やっと理解することができた。

 

世界選手権で優勝したら世界一を取り戻せる。世界チャンピオンに返り咲ける。

しかし、あの日決勝で自分を破って金メダルに輝いた選手に勝って優勝してもダメなのだ。そういうことではない。

それではリベンジ達成にはならない。

 

世界選手権優勝じゃダメなんです。世界一位じゃダメなんです。もちろん2位でもダメなんです(懐かしい)。

オリンピックで勝たなきゃダメなんです。

オリンピックの借りはオリンピックで返さないとダメなんです。

 

僕の中のトップアスリート魂が(なんだそれ?)テキサスで揚げたてポテトを引き寄せてもダメだと語りかける。アイダホの借りはアイダホで返さないと意味がないと語りかける。

 

アイダホバーガーのセットを注文し、商品の提供を待つ。

 

セット。

セット。

最初の2人に商品(ポテト有り)が提供される。

 

ぱっと見た感じだと、作り置きスペースには一箱あるだけ。前回の反省を踏まえて作り置きスペースの端を確認する(確認したとて何も変えられないけど)。

 

何もない。テカリを失った(ぬるい)ポテトはない。

正真正銘あと一つ。

 

おなじみの音が鳴り、新しいポテトが揚がる。テカテカのポテトからは油が滴り落ちる。

 

単品のダブルチーズバーガー。

単品のチキンフィレオ。

 

単品が続く。

テイクアウトじゃないのに飲み物なし。単品注文者が続く(店内飲食客ばかりだ。珍しい)。

僕の前に注文した人はあと1人。

 

油切りを終え、揚げたてのポテトは網カゴから調味スペース(店員さんが塩ふってかき混ぜるところ)へと移される。

 

僕の前の人がポテトを注文していれば、その注文がSサイズでなければ、僕の手元にはテカテカの揚げたてポテトがやってくる。

 

トレーにバーガーが乗る。

店員さんが注文リストをチェックする。

何も追加せず、トレーはそのままカウンターにやってくる。

 

テリヤキバーガー単品でお待ちのお客様〜。

 

なんで店内飲食で単品のバーガー注文なんだ(しかも3人連続)!?

ドリンクなしで、しかも水すらもらっていない客ばかり。意味がわからない。

 

喉乾かないの?

何も飲まないでいて口の中気持ち悪くないの?

 

疑問、怒り、落胆、そして諦め。

今日もまた作り置きのテカリのないポテトを食べることになってしまうのか…。

 

諦めたらそこで試合終了だよ。

 

安西先生…。

 

偶然の三井寿リンク!(そういえばポテト・テカリーヌでも三井の例えを使ってた)

 

店員さんはトレーにアイダホバーガーを乗せたあと、ポテトの箱に手を伸ばす。

 

諦めたらそこで試合終了だよ。

 

安西先生…。

でもこの状況で何をどうやって?

 

店員さんの手は作り置きのポテトの箱を掴まずに、空箱を掴んだ。

 

???

 

その空箱に揚げたてのポテトが詰められていく(よく見ると作り置きの箱の方が大きい。作り置きの箱はLサイズ?)。

 

揚げたてのポテトが詰まった箱がトレーに乗せられる。ドリンクとバーガーを乗せたあと、カウンターに運ばれた。

 

お待たせしました、アイダホバーガーのセットでお待ちのお客様!

 

諦めないってどういうこと?そう疑問に感じている状態は、諦めた状態としては不完全だったのだろうか?

…諦めきれなかった、ってことになる?

 

なんかこう、前を向くようなニュアンスではなかったけれど、これはこれで「諦めきれなかった男」の大逆転劇?

 

テカテカの揚げたてポテトを口に運び、アイダホバーガーにかぶりつく。横からぴゅいと飛び出したソースを指に付けながら、そんなことを考える。

 

ソースを拭き取るのは全てを食べ終わってからにした。指先を向ける未来はないし、裁判長はどこにも見当たらない。

この(思いつきの)結論に異議はないのだ。