いわにし日記

「いわにし」の取るに足らない日常や思いつき

そのノートパソコンではモニターを動かしきれないよ②

棒型にするか、箱型にするか。

無印にするか4Kにするか。

 

あらゆるブログのレビューを読み漁り、自分にとっての答えを探し続ける。11時から12時にかけて僕はパソコンの画面とにらめっこを続けた。

いくつか種類がある中で僕は「Fire TV Stick 4K」を購入することに決めた。

機械音痴の定番思考、一番新しい機種が一番高性能のはずだ。

 

Amazonにアクセスをし、「Fire TV Stick 4K」のページを表示させる。「在庫あり」の表示。すぐ側には最短のお届け日時が表示されている。

僕は悲しくなった。翌日の8時−12時が最短でのお届けだった。

 

昼に注文した商品が翌日の午前中に届く便利な世の中。クリック一つで家まで届けてくれる便利な世の中。送料無料のおまけ付。

この便利さは優れたシステムや携わる人の多くの努力の上に成り立っている。そのことを重々承知したうえで、それじゃ遅いよ…と思ってしまった。

翌日の8時−12時の到着ではヨーロッパリーグの決勝に間に合わない。キックオフは4時なのだ。

 

Amazonで無理ならもう無理。僕の住んでいる地域の当日配送はAmazonが扉を締めたらそこで終了だ。

他の通販サイトでの当日配送の可能性はすでに潰えているので、残された可能性は店頭在庫だけだった。ブログのレビューを読み漁っている最中に量販店での取扱があることを知った。

 

取扱店の一覧を眺め、着替えをする。自転車に乗ってノジマを目指した。

昼に外出をするのは何ヶ月ぶりだろう?街中の色の多さにクラクラする。夕方以降の外出とは全然違った。

平日の12時過ぎ、ノジマの店内は客がまばらで従業員のほうが多いくらいだった。

 

テレビコーナー。パソコンコーナー。オーディオコーナー。

ない、ない、ない。

ケーブルやマウス、キーボードなど周辺機器のコーナーもくまなく探したが、ここにもない。AmazonEcho以外にAmazonの冠がつく商品は一つも見つからなかった。

とぼとぼと駐輪場に向かう。

ノートパソコン単独でなら問題なくダゾーンを視聴できる。ヨーロッパリーグに間に合わなくてもチャンピオンズリーグには間に合うのだから無理をする必要はない。

でもなぁ…と。気持ちの収まりが悪い。

 

自転車で行ける距離にある取扱店はノジマだけだった。

新宿とか秋葉原とかに出て大型店を巡ることも考えたのだがどうも気が乗らない。そこまでして手に入らなかった場合、試合ごとどうでもよくなってしまいそうだった。

このまま家に帰るのも収まりが悪い。

落ち込み過ぎないように、やれることは全てやったと諦めがつくように。

自分の中での均衡点を見つけた僕は自転車を走らせた。存在だけは知っていた近所のPCデポに向かう。Amazonのホームページには記載されていなかったけれど、PCデポで売っていたという報告をネット上で見つけていたのだ。

これでだめなら帰宅をしよう、そう決めた。

 

PCデポの店内はとても静かで落ち着いていた。

パソコンと周辺機器ばかりが並んでいる。美顔器も電動歯ブラシも置いてなかった。

どうやらPCデポというだけあって、パソコン関連のものしか取り扱っていないらしい。

ずらりと展示されているノートパソコンはどれも10万円、15万円と高額で自分の使っているChromebookがいかにリーズナブルかを思い知らされる。

 

フロアの真ん中辺り、少し小さな展示台の上にWi-FiルーターやiPadではないタブレット端末が並べられていた。

おそらく力を入れていないだろう寄せ集め感あふれるその展示台の上に目当ての品があった。眩いオレンジ色のパッケージには「Fire TV Stick 4K」の文字。

最後の一つではなかったので(2個、惜しい!)ドラマチックポイントは半減だが、店員さんに背を向けて展示台に隠れる高さで拳を握った。

ついに見つけた。

店内をくまなく一周してから眩いオレンジ色のパッケージを手にレジへと向かう。女性の店員さんに手渡しながら、一つ質問をした。

「この商品の取扱はありますか?」

 

Amazonのスマホアプリを開き、ショッピングカートの上から2番目の商品をタップしてから店員さんに画面を見せた。「Fire TV Stick 4K」とホームルーターをLANケーブルで接続するためのイーサネットアダプタを探していた。

店員さんは「ちょっといいですか?」と僕からスマートフォンを受け取り画面に表示された一枚目の写真を凝視する。

「うーん…LANケーブルを繋ぐためのこういうアダプタは取り扱いがあるんですけど、接続するこっちの端子がわからないな…」

2枚目、3枚目、4枚目…と店員さんは人差し指を画面の右から左へスワイプさせていく。ひゅんひゅんと次の写真を表示させて不明な端子の形状を確認しようとしている。

 

最後の写真まできたところで、「あ…やめて」と思った。

右から左へとすばやく動いていた指先がその向きを変える。左から右へ、写真は一枚目に戻っていく。

写真ではなくページが戻ってしまったらどうしよう…。

ページを戻す操作も左から右へと指を動かすスワイプだ。万が一の可能性は否定できない。

ページを戻った先、ショッピングカートのページの一番上にある商品はAVだった(オーディオではない方の)。戻ったが最後、パッケージ写真とタイトルはどうしたって店員さんの目に入ってしまう。

 

好みは人それぞれだろう。

ぱっちり二重が好みなのか、切れ長の一重が好みなのか。可愛い系なのか、綺麗系なのか。キツネ顔なのか、たぬき顔なのか。

正しいとか正しくないとか、そんなものはこの世に存在していない。好みなのだから、他人の評価はなんの意味ももたない。

しかし、AVの好みとなると話は少し変わってきてしまう。呼び方が「好み」から「性癖」へと変わり、それは単なる個人差以上の意味を持ってしまう。

僕は自信がなかった。僕が良さそうだと判断をしてカートに入れたAVはノーマルの範囲の中に足を残しているのだろうか?片足だけでも残っていて、且つラインにかかっていればセーフと聞いているが、果たして。

一般的にはノーマルの範囲内だろうと思うけれど、こういう場合は相手がどう思うかでほぼ全てが決まってしまうのだ。

 

「うーん、どうだろう。こっちの端子が…」どうにか答えにたどり着こうとスワイプや画像の拡大を続けている仕事熱心な店員さんに、売り場になければないって感じですかね…と声をかけ会計を促す。

一刻も早くスマートフォンを返してもらいたかった。

 

会計を済ませアパートに戻る。

Fire TVを手に入れた喜びよりも無事にスマホを取り戻した安堵の気持ちのほうが大きいことに気が付き、どっと疲れが寄せてきた。パッケージのオレンジ色も店内で見つけたときよりは落ち着いた色に見える。

 

選手の動き、ボールの動き、どちらも滑らかだった。5分、10分と視聴を続けても動きはカクカクとしてこない。当然画面の中心で円がくるくる回ることもない。

ダゾーンのサッカー中継はついに快適さを手に入れた。「Fire TV Stick 4K」はモニターを動かしきった。