いわにし日記

「いわにし」の取るに足らない日常や思いつき

オレオレに対してのヨメヨメ

お久しぶりです。お忙しいところすみません。

夫が亡くなったときには本当にお世話になりました。お陰様で相続も会社関係の整理も問題なく終えることができました。

先生に助言をして頂いた通り、トップには佐伯さんに就任していただきました。

えぇ、息子にはこれからたくさん経験を積んでもらって、周囲が納得をする形で引き継いでもらえたらと思います。夫と育てた会社を、いずれ息子に託すというのは夫婦の夢でもありましたから。

育てた、なんて後乗りした私が言うのは生意気ですよね。まだまだ規模が小さかったとはいえ、私が夫と結婚をした頃には会社は軌道に乗り始めていましたから。

 

あの、これ、春華堂のうなぎパイです。奥様から先生の好物だと伺いまして。実家が沼津なので、急いで送ってもらいました。よかったら、召し上がってください。

 

今日こうしてお邪魔させていただいたのは、一つ相談をしたいことがあるからなんです。本来なら息子に相談をするのが筋なのでしょうが、しかし今回はそういうわけにもいかず…。

えぇ、そうなんです。息子のことで。

いえ、その…正確には2年前からいつも息子の側にいる女のことで。

 

はい、そうです。先生が日課のウォーキングを行っているときによくすれ違う、トイプードルを散歩させている女のことです。

お気づきでしたか。あの女、身につけているもの全てが高価なブランド品なんです。犬の散歩をさせるだけなのにえらい洒落込んでいますよね。シュッとした部屋着みたいな格好なのに、全部で20万円くらいかかっています。

まったく、その買い物に使ったお金はどこから出てきたんだって話ですよ。

 

先生、あの女は戸籍上では息子の嫁になりましたけど、実際には嫁ではないんです。

確かにあの女は息子の嫁として周囲に紹介をされています。私たち親子とも同居をしています。毎日3人分の食事の用意をしてくれていますし、息子のサポートを献身的に行っています。

しかし、それらは全て周囲に対するアピールでしかないのです。

 

円満な家庭ですね。

理想の夫婦ですね。

よくできた嫁で羨ましいわ。うちの嫁なんて…。

 

近所の方からはそんなお褒めの言葉をかけていただくことが多いです。

…確かによくできた嫁ですよ。端から見れば円満な家庭で、理想の夫婦なのかもしれません。これがお隣さんの息子夫婦だとしたら私だってそう思うでしょう。

でも違うんです。家の中にいればわかるんです。あの女が腹の底で考えていることは、息子と幸せな家庭を築くことではありません。

少し考えればわかることですが、息子の幸せを願っている人間が、息子と私との間にある幸せな関係の邪魔をしようとするわけがありません。

 

私が日々を幸せに過ごすことは息子にとっての幸せです。

私が日々を不幸せに過ごすことは息子にとっての不幸せです。

今の私が日々を不幸せに過ごしているということは、息子もまた日々を不幸せに過ごしている、ということになります。

生活をともにすることを近所の方からは羨ましいと言われますが、果たしてそうなのでしょうか?

 

あの女は、私と息子の幸せな家庭に突然割り込んできました。

私が息子のために食事を作る機会と幸せを奪いました。

そのことを同居してくれる嫁、食事を作ってくれる嫁、総じて「よくできた嫁」と評価しなくてはならないのはおかしくないですか?

 

あの女には息子に対する愛情が全くありません。

あの女が考えているのは、自分の利益の最大化だけです。

絶対にそうです。私にはわかります。

円満な家庭、理想の夫婦、よくできた嫁。

肩書を集めているのは、それらが長期的に利益を享受するためのランニングコストであることをよく理解しているからです。

息子が離婚を切り出せない状況をつくり、仮に離婚を切り出されたとしても息子が悪者になるように周囲の評価を高めておく。

…まったく、強かな女ですよ。

 

先生、私はあの女を息子から引き離したいのです。

息子との幸せな家庭を取り戻したいのです。どうか、力を貸していただけないでしょうか?なんとかして法律で裁いていただけないでしょうか?

 

えぇ、まぁ。それは承知しています。表向きにはあの女は何一つ悪いことをしていませんから。

姑と同居をして、家族のために食事を作って、働く夫を献身的にフォローしている。加えて周囲からの評判は上々。

訴えたことがご近所さんに漏れてしまえば、裁かれるのはおそらく私になります。

反りの合わない嫁を力ずくで追い出そうとした、と一生言われ続けることでしょう。

ですが、話し合いではあの女を息子から引き離すことはできません。どれだけの条件を提示しても、あの女は決して首を縦には振りません。私にはわかります。間違いありません。

 

先生、例えばですよ、あの女を詐欺師として訴えることはできませんか?表向きには評価を集めている全ての行動が、詐欺を成功させるための布石だとしたら話は違ってくるのではないでしょうか?

婚姻制度を利用して、合法的に嫁を名乗り、長期に渡り夫の金を騙し取り続けることが可能な関係性を構築している。

このような捉え方をすればあの女のことを詐欺師と呼んでも言い過ぎではないと思うのですが、いかがでしょうか?

これはもう、ヨメヨメ詐欺の実行犯ってことになりますよね?

 

はい、ヨメヨメ詐欺です。オレオレ詐欺に対してのヨメヨメ詐欺です。長期に渡ってオレオレ詐欺のようなやり口で息子のお金を騙し取り続けてるので、そう名付けました。

関係性を担保にしてお金を騙し取るなんて本当に悪質じゃないですか?

 

オレオレ詐欺の実行犯が被害者から騙し取るのは基本的に1回です。金額にして数万円から多くても数百万円でしょう。

その点、ヨメヨメ詐欺は悪質です。実行犯が被害者から騙し取る期間は基本的に数十年間。その金額は数千万円から数億円です。

ヨメヨメ詐欺は夫が死ぬまでの間収入の半分を騙し取り続け、夫の死後残した預金や住居を相続するのです。一回騙し取るだけのオレオレ詐欺より悪質であることは明確です。

ウチの場合は会社を経営しておりますので、株式や不動産を含めた総額は数十億円になります。

 

ウチは息子が跡継ぎになることが決定事項だったので、夫がなくなったときに資産のほとんどを息子の名義で相続しました。こんなことになるなら、一旦は私の名義で相続を行うべきだったと後悔しています。

あのときはまだ、息子が詐欺師に寄生される未来を想像していませんでした。いえ、想像することすら出来ていませんでした。

あの子は父親譲りの初で純朴な子だったので、悪い虫がつかないように私がちゃんと見張っているべきでした。ケアを怠った自分を責める気持ちでいっぱいです。

 

先生、あの女を、いえ、あの詐欺師をどうにか息子から引き離すことができないでしょうか?

私にはあの女が息子から収入を騙し取り続けるのをただ黙って見ていることしかできないのでしょうか?

そんなのはあんまりではないですか。40年以上連れ添った夫を亡くし、手塩にかけた息子が詐欺師に寄生されるだなんて、そんなのあんまりではないですか。

夫が創り育てた会社、これから息子が育て収益を上げていく会社のその半分が、将来的にはあの女のものになってしまうなんてあんまりですよ。

先生、お願いします。どうにかあの女を息子から引き離してください。

 

えぇ、それは間違いありません。絶対にあの女は息子を愛していません。私にはわかります。

いえ、先生、これは思い込みや偏見ではありません。女の勘や直感とも違うんです。とにかく、そういう類のものではないことをはっきりと申し上げます。

なぜって…。わかるものはわかるんですよ。

だから先生、わかるものはわかるんです、根拠もあるんです。私にはあの女が詐欺師であることに確信が持てます。

だからなぜって…先生も野暮なお方ですねぇ。

先生、かく言う私も詐欺師の一人ですから。40年以上かけて騙し取り続けたお金を他の女に渡すつもりは毛頭ありません。