いわにし日記

「いわにし」の取るに足らない日常や思いつき

叔父・叔母の連打

何年ぶりだろうか?

成人式のときに近所のコンビニの駐車場で会って以来だと思う。お互いに一言二言交わし、ご祝儀をもらい、それっきり。

大学を卒業した後に父の実家で一度会ったような記憶があるが、否定できないだけで記憶そのものに質感はない。いくつかの記憶をパッチワークして作られたもののような気がしている。

 

叔父夫婦の家には過去にお邪魔したことがあった。家を建てた直後と、高校生の頃の二度。自分の将来や現状について全く恥じていなかった頃だ。

学校の成績はそれなりに良く、それなりに強い部活に所属していた。進学にしろ就職にしろ学校に来ている案件の中からそれなりに自由に選べる立場にあった。

 

「一度くらい東京に出たらいいと思うよ」

進路希望表の「就職」を丸で囲んでいた息子にかけた言葉を後悔しているだろうか?

父の人生において「やり直したいあの日・あの時ランキング」の第何位に入っているだろう。

志は高く、ベストテンにランクインすることが目標だ。スタジオにいる黒柳徹子さんと久米宏さんに一目お会いしたい。

 

「これね、結構すごいの。ニトリ。」叔父に勧められてソファに座る。

ボタン操作一つで背もたれの角度調節が自由自在。膝下部分も調節可能で、高さを変えれば座椅子のように足を伸ばして座ることができる。

 

座椅子のような形にして座っていると、犬がやって来た。

くるくるの毛に包まれた小型犬。以前見たときはさらさらの毛だったけど、この10年ですっかり様変わりしていた。

単なるイメチェン?恋人の影響?生まれ変わり?

10年ぶりで犬ですから…まぁ。ミニチュアダックスフントがトイプードルになるわけがなく。

 

くんくんくんくん、だっだっだっだっ。僕の靴下の匂いを嗅いだ後、部屋の隅まで小走りで向かいピタッと止まる。顔を持ち上げ、首を左右に何度か振る。

踵を返し、小走りでまた僕の足元に戻ってくる。

くんくんくんくん、だっだっだっだっ。部屋の隅でピタッと止まり、顔を持ち上げ、右左。

 

金ないけどすげー腹減ったな、ってときにラーメン屋の換気扇の前を通る感じ。すっげーくさい豚骨ラーメン屋の換気扇の前。

金ないから無理だけど、あー、どうしよう…。

一応もう一回だけ、のあの感じ。

 

4回繰り返した後、トイプードルは部屋の外へと飛び出していった。

 

定期的に顔を合わせている叔父夫婦と父、(おそらく)10年振りの僕。

どうあがいても話題の中心は僕になる。

 

「まだ同じところでバイトしているの?」

「アルバイトだと貯金まではなかなか手が回らないでしょ?」

「え、どうすんの、これから。このままずっとバイトってわけにはいかないでしょ。」

「支えてくれる彼女とかいないの?」

 

次に会うのはいつになるかわからない。結局のところ他所の子。心配よりも好奇心強め。

距離を取らないインファイト・コミュニケーションで攻め立ててくる。

 

叔父

叔母

叔父

叔母

 

左右の連打。1発の威力は右(叔父)ストレートのほうが強いけれど、時折左(叔母)フックが見えない角度から飛び込んでくる。

バイトについては事実7:嘘3で騙し騙し答えたけれど、異性については口を閉ざしちゃう可愛い私。

ティーカップをソーサーに戻す音で聞こえなかったフリをして口をつぐむ。

 

聞きたくても聞けないのはわかる。自分の口から聞けないのもわかる。

聞いてもいいことないから。これが意味するのは報告内容ではなく関係の悪化にほかならない。

叔父と叔母に滅多打ちにされている僕を、父は一切助けない。それどころか、もっと聞いてくれ、と思っているのが相槌に出てしまっている。

「そうだな、30までだな」そろそろ区切りをつけて地元に帰ることも考えた方がいいんじゃないのか、と話す叔父と叔母に、と自分の気持ちをちょい足しする父。

集団心理が悪い形で作用する。

 

満足したのか、曖昧な返答が多い私からこれ以上の情報を得られないと判断したのか。父が腰を上げ、やっとお暇することになった。

私には、途中で怒って帰ることも沈黙を貫くことも出来ない。

車の運転も直前の食事の支払いも、請け負ったのはとっくに還暦を過ぎているお父様。

オヤスネカジリムシの私に逃げ場はないのだ。