いわにし日記

「いわにし」の取るに足らない日常や思いつき

はっきり、最初に

9月下旬のある夜のこと、僕は家電量販店にいた。iPad miniの画面保護フィルムを買うことが目的だった。

 

店に入ってまず目に飛び込んで来たのはiPhone11。多くの人がデモ機を触り、販売員に説明を聞いていた。

群れに紛れて僕もデモ機を少し触った。

 

僕のiPhoneは7なので、それと比べたら色々と進化しているのだろうけど、デモ機を触っての一番の感想は、「でかい」。2番目は「ホームボタンないの落ち着かないなぁ」。

高い金を払って機種変更する意味のない末端ユーザーだ。

ポケットに入れて持ち運ぶイメージが出来たのは、新型3機種のなかで1番小さい11Proだけだった。

 

ポケットに入れて持ち運ぶならこのW06だよなぁ。

 

iPhoneのブースを離れた僕は、WiMAXのブースの前で立ち止まっていた。

「スマホいじってるだけならどけよ!欅坂46の画像をインスタで検索するのはWiMAXに関係ないだろ!」

心の中で毒づくが、願いは届かず。体をホームルーターの前に置きながら、目だけでモバイルルルーターのスペックを読む。

 

夏前に契約した時にはホームルーター以外考えられなかったけど、モバイルルーターもありっちゃありだよなぁ。

 

季節が変われば気持ちも変わる。

 

こっちは変わらないで良かったのに…。

油断していたのだろうか。いつもなら曖昧に頷くだけで会話をしないのに、どういうわけか「えぇ、まぁ…」と相手に付け入る隙を感じさせる返事をしてしまった。

 

急いで質問を考える。「何を悩んでいるんですか?」と言われても…何にも悩んでなどいない。

仕方がないので「まだ検討段階なんですけど、ホームルーターってどうなんだろうな、と思って…」と聞いてみた。

 

販売マニュアルの何ページ目だろうか。押せば買う客はこんな客。あの時の僕はおそらくそんな客の一人だった。

例1「付け入る隙を感じさせる客が、具体的な質問をした。

 

販売員は僕にクレジットカードの有無を尋ねた。僕が所持していることを確認すると押し売りスタート。9月中に契約をするメリットの説明を始めた。

 

「本体代金1円って書いてあるじゃないですか。これ、来月になると法律が変わって出来なくなっちゃう販売方法なんですよね。来月からは2万円くらいになります。」

 

「今月中だと、契約に必要なのってクレジットカードだけなんですよ。でも、来月になると本体を分割契約する形になるので、カード持っているだけじゃダメになるんですよね。審査が必要になるんで、お客さんの過去の支払い情報によっては契約ができなくなっちゃうんですよ。」 

 

どこ?製品の説明はどこ?

押せば買いそう、そんなに金を持ってなさそう(なんだとこのやろー)な僕に対して、販売員が説明するのは2つだけ。

今月買うことがいかにお得か。来月買うことがいかに損か。

 

あぁ、うん…まぁ…。煮え切らない僕の態度を続けながら、断るタイミングを窺う。そろそろ踏ん切りをつけないと。

少しずつ、断りきれない自分の姿が見えてきたのだ。

 

「なるほど…一旦持ち帰って出直」言い終わらないうちに販売員の左右の眉は中央に寄る。

 

「え?今決められない理由ってなんですか?」

「今契約しないで来月以降に持ち越せば、今より損な契約しか出来ないんですよ。」

「ギリギリになって契約する場合、希望のルーターが手に入らない可能性がありますよ。」

 

「契約するって言ったじゃん」の勢いで捲し立てられる僕。

退会手続き並みに面倒臭い販売員に、勇気を出して、この件は持ち帰ることを伝える。

販売員の「案件じゃなくてルーター持ち帰れや!」の気持ちに負けるわけにはいかない。そもそも契約するなんて一言も言っていない。

 

「それじゃあ名刺渡してもいいですか?今契約しなきゃ損するだけですけどね」捨て台詞に近い別れの言葉と共に名刺を受け取る。

 

名刺には販売員の名前と一言のメモ書き。

「検討中」

 

この名刺を渡す意味はあったのだろうか?

 

保護フィルムを選ぶ僕の気分は沈んでいた。

一回も「契約します」とは言っていないが、「検討段階」としか言っていないが、でも、たぶん俺が悪いんだろうな…と。

 

今回に限らず、最初に断るのが一番平和的な解決策なんだろうな。

うん、お互いの為にも最初だ。