いわにし日記

「いわにし」の取るに足らない日常や思いつき

未来は僕らの手の中

あれはまだ、この年の夏の猛威を知らなかった頃のこと。

 

馬鹿にされたり、見下されたり。隠そうとしていてもこちらにはわかるもので、女性でいうところの、いま私の胸見てたでしょ、の感覚。

 

バイト先の大学生は隠し切れない。ボロが出る。

自身の明るい未来を信じて疑わない彼ら・彼女らは、フリーターを見下している。

 

お先真っ暗ですね。僕のようなフリーターに対して大学生はこう思っているだろう。

20歳そこそこの君たちには、干支が2週しきってないような君たちにはわからないだろう。戌・亥の前がわかんなくて、ごにょごにょ言って誤魔化すような君たちには。

 

お先どころか、振り向いても真っ暗だからな。振り向いた先が真っ暗の方がよっぽど怖いからな。

明かりが灯っていたはずの場所が真っ暗になっている方がよっぽど心細い。

 

卒業して3年ぐらいは振り向いた先に薄ぼんやりと明かりが見えていたけれど、7年目にもなると明かりはどこにもない。

 

学校帰りの僕たちに野球を教えてくれたおじさんを、自分しか覚えていないみたいな。

いたじゃんか、ほら、あの、マジックで巨人って書いた偽物のキャップ被っていたおじさん。

 

いたと主張するほどに、同級生から不気味がられる。振り向くと明かりが見えていた、と考えるほどに現状と向き合うのがしんどくなる。

 

戻っても戻っても真っ暗、ってのが一番怖い。もう前を向くしかないんだ、前を向いて歩き続けるしかないんだ、ってことにしておく。

 

そんなこと言っといて、いつの間にやら周回コースに足を踏み入れてたりして…。

 

大学まで通わせてもらって、就職できないで卒業迎えるなんて人生詰みじゃないですか?

就活中の大学生が休憩中に発した、悪意なき呟き。彼は、大学を出てフリーターになった僕に就活の進捗状況を報告してくる。

 

僕と彼との間に共通の話題がないから、自分にとって一番ホットな就活の話をする、ってのはわかる。そこには引っかかっていない。

彼はあくびをするように意味なく発した言葉に、人生詰み発言に、僕が重傷を負ったことをわかっていない。

革靴のヒールで踏まれた僕の足の小指が折れたことに気がついていない。ガタンと揺れた電車の中だ、なにかを踏みつけた事すら気がついていないかもしれない。

 

僕は曖昧に、まあねぇ・・・と頷くことしかできなかった。

 

その状況の人に対して、その状況になったら人生詰みですよねー、って。引っかかる。文句は言わないけど、無視し切れない。

 

こんなこと言いたかないけど、

「最悪ですよ。第一志望の会社、面接で落ちちゃいました。就職できなかったら俺どうすればいいんすかね?」

ってあれも引っかかっている。

 

目の前にバッドエンディング見つけて、必死に逃れようとしている感じ。赤と青の線、どっちを切って爆発したんですか?俺、逆の方切るんで教えてくださいよ、みたいな。

無意識のうちに手の中のニッパーをチャカチャカやってるのがこわい。教えてあげるから、ニッパーをチャカチャカするのはやめなさい。

 

僕の人生は赤と青のどっちも切っていない。決める前に時間切れで爆発したからね。

 

好きな方を切ったらいいんじゃないの?
時間切れでも爆発するんだから、赤でも青でも好きな方を切っちゃえばいいじゃん。

 

まだ時間が残っているうちにさ。

未来はまだ、手の中にある。