いわにし日記

「いわにし」の取るに足らない日常や思いつき

帰省ー2019ー冬

峰打ちでは済まさない親戚の、大立ち回り。

東京で何をしているんだ。

稼ぎはどれくらいなんだ。

貯金は?彼女は?

ずいぶん禿げたな。

久しぶりに会った僕の見た目の変化と社会的な何かについて聞く態度に遠慮はない。

好奇心兼品定め。

転校生に対する初日の群がり方のようだ。

 

大体のことについて、事実をベースに嘘を混ぜながら適当に答える。

彼女については聞こえなかったふりをする。コーヒーカップをソーサーに戻すときのカタンッの音で聞こえなかったことにする可愛い私。

同席した父は助け舟を出さない。自分が聞けない分、親戚にはもう少し踏み込んだ質問をしてほしい、といった様子を見せる。

 

父を含め、家族は僕に仕事や将来についての質問をしてこない。

「伸ばしたらどう?」父は勇気を出して踏み込んで、僕の禿げに触れた。

親戚からの指摘に僕が冗談で返答しているのを目撃した数時間後、やっと。

安全性が確認された後に、やっと。

「伸ばしても薄いところは伸びてこない。今よりみっともなくなるだけだよ。」

強がりでもなんでもなく、今の状況こそがベターであることを伝える。

今の状況のままなら、ロッベンの髪型を真似ているだけだと強がることも可能だ(ベッカムのソフトモヒカン的に)。

 

帰省した時、両親は兄と弟の仕事の様子について色々と教えてくれる。僕と両親の間の数少ない話題の一つだ。

兄と弟の収入・生活の様子を両親はそれなりに把握している。

僕については収入しか知らない。生活の実態についてはほとんど把握できていないはずだ。

両親が踏み込んでこなければ、僕は自分の東京での生活について何も話さない。踏み込んできても話さない部分については話さない。

家族であっても全てを知る必要はないのだ。僕が両親の馴れ初めをこの先も知らずに生きていくように、だ。

生活が見えないことで不安を与えてしまうのは申し訳ないけれど、見えたことでそれが苛立ちに変わってしまうことは想像に難くない。

「苦労している感」を上回る「だらしないだけ感」が僕の生活にはある。

 

兄弟の仕事の状況、天気(東京に戻る日について)、ワイドショー(今回の帰省では大坂なおみ選手)。

話題の3本柱はフル回転。

東京に戻る日の天気の話なんて3日の滞在期間中に10回以上した。

 

東京に戻る日、と書いてなんだか引っかかる。

稼ぎ頭ならまだしも、僕は稼ぎ尾だ。兄の何分の1の稼ぎなんだ?

オヤスネカジリムシが東京に戻る…。

オヤスネカジリムシが幼虫の状態ならば、いつかサナギを経てマイツキシオクリムシ(コウザフリコミ科)に姿を変えるので問題はない(長い目で見れば)。

幼虫ではなかったら?すでに成虫だとしたら?

実家に戻らないのはお互いのため…かもしれない。

心配することが出来る今の距離感は実はかなりベストな状態なのかもしれない。

 

箱の中身はなんだろな?

「え、硬い!短い!なんか尖っている!わ、痛っ、刺された!!!」

わからないからこそキャーキャー騒げる。

残念、箱の中身は…

「あなたがまだ幼稚園の頃、毎日使っていたサクラクーピーピンシルよ。こんなに短くなるまで絵を描いてー 見て見て、お母さんすっごく上手に描けたよ、本物より美人に描けちゃったかも ー嬉しそうに報告してきてくれたな」

…思い出のたくさん詰まったサクラクーピーペンシル(やまぶきいろ)でした!

正解を知った後に騒ぐ気持ちは起こらない。どういうわけだか涙が頬を伝う。にしても「やまぶきいろ」って…引っかかったままであっても、だ。

 

冷蔵庫の中に頂き物のチョコレートがあった。少し賞味期限が切れているらしい。

「結構美味しいよ」両親は食べるが、僕には決して勧めてこない。

「あんた、賞味期限が切れたらもうだめだもんね。」まただ。小学生の時、賞味期限が切れたお菓子を食べて腹にあたったことを持ち出してくる。

友達の家でもらってきたクリームチーズの洋菓子。学習机で最もセキュリティが万全な鍵付きの引き出しの中で2週間保管してから食べた。もらった当日が賞味期限だったのだから、あたって当然だった。空クジなし、だ。

二十年近く前の出来事を持ち出される度に「またか」と思うが、少し期限が切れているくらいなら平気であることは伝えない。

わざわざ伝えないことで、不意に勧められる瞬間に期待している。

よっぽど良いものの時なのか、単に記憶の改ざんが行われた時なのか。

興味が向くのは勧められることよりも、どんな理由で勧められるのか。

 

今回の帰省はこんな感じ。