いわにし日記

「いわにし」の取るに足らない日常や思いつき

カレーを作るのが下手

大学の時、友人に(当時の関係性なら友人ってことでよろしく)カレーを食べさせてくれと言われた。

ボンカレーでも銀座カリーでもなく、レトルトじゃなくてお前の作ったカレーが食べたい、と言われた。

 

プロポーズ?

随分と古風な表現なこと。

 

毎朝味噌汁を作ってくれじゃなくて、カレーを作ってくれだなんて。甘え下手がスパイスに転じてカレーに?

 

残念ながらこれは彼からのプロポーズではなかった。ボーイズラブには発展しなかった。

ん、残念だったのか?

 

彼は少し前に他の友人の家に遊びに行き、カレーを食べさせてもらったらしい。それがかなり美味しくて、ほかの人の作ったカレーも食べてみたくなったとのこと。

 

特に断る理由はない。数少ない自炊の中にカレーはよく作るし、好きな食べ物だ。快諾した。

 

翌日、友人ともう1人の友人(最初のカレーの彼)が僕の家に来た。僕は2人が到着する前に、既に鍋いっぱいのカレーを用意していた。

 

吹きこぼれるほどのもてなしの気持ちに比例してその量なら素敵なのだが、実際はカレーのルーを一箱使い切った時の量でしかない。

半分の量で作ると3〜4食分で、2人が食べると自分には1〜2食分しか残らない。片付けが面倒臭いのに。材料費は全部こっち持ちなのに。ちゃんと部屋の片付けまでしたのに。

 

一人暮らしで、自炊を面倒臭く感じている人には理解してもらえると思うけど、カレーを作るということは、今後の数食分の事前調理をするということだ。


下手すりゃその場で食べ終わる量しか作らないなんてありえないことだ。

いただきます、ごちそうさま、をちゃんと言ってくれるのかわからない相手に対して。食べ終わった後に食器を流しに運んでくれるのかわからない相手に対して。

 

こんなタイミングで言うことじゃないかもしれませんけど、お母さんいつもありがとうございます。

 

僕はいつも通りのカレーを用意した。

豚肉・じゃがいも・人参・玉ねぎ、バーモンドカレー(中辛)を用意。具材を炒め、水を張る。加熱してアクを取り、ルーを加えて煮込む。
オーソドックスな、カレー。隠し味もオーソドックスに愛情のみ。もちろんその愛情は内から湧き上がるもの(本当に?)で無添加・無着色。

 

本当にいつもの自分が食べる用のカレーを作った。腹減ってんの?昼飯で作ったカレーならあるけど、食べる?のスタンス。

 

それぞれが好きなだけ皿にご飯を盛り、カレーをかける。来客の2人は僕よりも多く盛った。

 

いやー、普通ですけどね。いつも通り作っただけですけどね。

美味しそうに見えたんだ?なんてことない普通のカレーだよ。見慣れてるからさ、どこがいいのかわからないんだよね。

 

盛り付けられた量を見て嬉しくなって、いただきますがないことは許せてしまう。でもすぐに、やっぱり許せないと思った。

リクエストに応えて買い出しをして(自費で)、部屋の片付けまでしたというのに(おもてなし)、開口一番それ言う?

 

美味しくない、全然ダメだわ。

 

そっから先はもう痛みすら感じない。連射が終わらないマシンガンに撃たれ続ける屍の気分。

1発目をくらったときに後ろに倒れる感じになっておけば今頃もう楽になれていたのに…。なんで前のめりに倒れる体勢になってしまったんだ。

死に際に後悔するのがそれだとしたらあんまりだ。

 

2人にものすごく批判されたのは、じゃがいもを入れたこと。あり得ない、と言われた。じゃがいもを入れた時点でもう駄目とのこと。

最後の方には、下手なんだから難しいことやろうとしちゃ駄目なんだよ、とお叱りを受けた。

 

どうやら、2人とも母親が料理教室の先生をやっているらしく、家庭料理にはこだわりがあるらしい。

狡いよ、先言っとけよ。わかってたら見栄はっていつもと違うカレー作ったのに。

 

そのまま3時間くらい部屋で過ごし、2人は帰って行った。


僕は残りのカレーを温めなおす。ご飯は無くなってしまったので、冷凍をチンした。あんなにボロクソ言われたのに釜の中には米がない。たくさん食べてくれた。たくさん食べやがった。残さなかったことすら腹立たしい。

 

僕はじゃがいもが入っていないカレーを経験したことがなかった。実家のカレーも、友達の家のカレーも、学校給食のカレーも全部じゃがいもが入っていた。

じゃがいもを入れたことを怒られても全然ピンとこなかった。

 

言う側の温度がこれってことは、多分そうなんだろうなぁって。実感が伴わないまま怒られ続けた。

 

有り難いお水の訪問販売に来たおばさんに、あなたまだ普通の水道水を飲んでいるんですか?って怒られてる感じ。

一瞬立ち眩みのような仕草をして、ちょっ、信じられない…って小声で言われても、その後の精神世界のお話は僕の芯を震わせることはない。

 

カレーが温まったので、解凍したご飯にかけてその日の晩飯にする。ボロクソ言われたことを思い出しながら食べた。

 

美味しくない。全然ダメ。

そう言う2人のカレーは僕の皿より大盛り。

 

めちゃめちゃ腹がたって、味なんか感じない。これが痺れる辛さってやつか!(多分違う)

 

一晩寝かせるべきだった。怒りを鎮めるためにも、カレーを美味しく食べるためにも。