いわにし日記

「いわにし」の取るに足らない日常や思いつき

そのお客様は神様...付近に。

うん、出かける。マルエツに弁当買いに行こうと思って。

 

別に良いけど。

で、何を買ってくればいいの?

 

日本酒と米ね。うん。

あのー、あれでしょ?神棚にお供えする用のやつでしょ。

 

米は何を買ってきたらいいの?

あきたこまちの2キロのやつね。

あー、酒の方は大丈夫。たまに一口分けてもらってるからわかる。神様のためにも一番おいしいやつ買ってくるわ。

 

そんな硬い事言うなよ。もう21歳何だから、飲酒しても大丈夫なの。

それじゃあ行ってくるね。

 

あぁ、いらっしゃい。

婆ちゃん、お客さん来てるよ。

 

 

 

 

ただいま。

いやー、参っちゃうよ。童顔の21歳には生き辛い世の中だよ、全く。

婆ちゃん、買ってきたよ。お金、ん、どうしたの?

 

あぁ、あの、えっと…何があったんでしょう。随分と怒っているみたいですけど。

いや、客じゃなくて、僕はその人の孫です。

あ、あの、さっきの人ですよね。店の入り口のところですれ違った。

それであの、何があったんでしょう?

 

はい。

はい。

あー。

はい。

 

あのー、まぁ、たまに同様のことを言われるお客さんいるんですけど、この店の場合グラスまで冷やして置くのはスペース的に無理なんですよね。瓶ビールを冷やすスペースを確保するのでいっぱいいっぱいで。

あのー、はい、あの、お気持ちはわかります。僕も外で飲んだときにグラス冷えてないとテンション下がるタイプなんで。

 

一応21歳です。こんな童顔ですけど、はい。さっきマルエツで神棚用の日本酒買うときもパートのおばさんに散々疑われました。

 

まぁ、あの、お気持ちはわかりますけど、そういうことなので。

ご理解下さい。

グラスが冷えていた方がお客さんが喜ぶとわかっていて出来ないこちらの無念を察して下さい。

 

ん、まだあるんですか?

 

はい。

はい。

はい、ふふっ。

 

すみません、怒っているんですもんね。すみません。

ふふっ。

たまにありますよね。「この野菜炒め、キャベツの芯多くないか?」ってとき。

笑い事じゃないですよね、ふふっ。すみません。

 

てか、えっ、本当にそれで怒っているんですか?

だってそんなのただの運じゃないですか。餃子の焼き目が綺麗か、とか、豚汁の肉が多いか、とかと同じで完全に運の要素じゃないですか。

お客さんて、もしかしてあれですか?オリジン弁当の海老とブロッコリーのサラダで海老ばっかり拾い上げる人ですか?

 

とにかく、野菜炒めのキャベツの芯は運ですし、うちの店の冷蔵庫内にはグラスを冷やすスペースはありません。

ね、これはただの事実ですから。理解していただくしかないですよ。

 

これで全部解決ですね。

あとは食事をごゆっく…は?

 

いやー、ビールも野菜炒めも手をつけちゃってますし…。

気持ちはわかりますけど、うーん...婆ちゃんどうする?

 

てことなんで。婆ちゃんが払えって言ってるので、今回はもう諦めて払ってください。

まぁ、そのもっと言えば、あの、これ…年上の方に説明するようなことでもないですけど、ビールも野菜炒めも提供に対する料金なので、実際に飲んだり食べたりするかは関係ないですしね。

 

ごねてもだめですよ。お客さんみたいに「客をなんだと思っているんだ」って印籠みたいに「ばばーん!」って出す人たまにいるんですけど、あと「お客様は神様だろ」って人、これね、どれだけごねてもだめなんですよ。

うちの婆ちゃん、毎日神棚にお供え物してるんですね。あの、これ。神棚用のお米と日本酒。

 

ちょっ、お客さん勘が悪いですね。

いいですか。

婆ちゃんは「いるかどうかもわからない」神様に、毎日毎日お供え物をしているんですよ。身銭を切ってお米やらお酒やらを買ってまで。ね。

え、なんでピンときてないんですか?

 

お客さんに確認なんですけど、ビールと野菜炒めってお客さんが注文したものですか?

婆ちゃんに声をかけて、席まで来てもらって、その2つを注文したんですよね。そうですよね。

店に入ってきたあなたを見て、婆ちゃんが勝手に作り出したものではないですよね?

そうですよね。だったらもう諦めてください。

 

少なくともお客さんは神様ではないので。提供された以上はお金を払ってください。

お客さんが神様だった場合、婆ちゃんは勝手に料理を作り始めているはずなので。

 

 

 

あ、ちょっと、お客さん。ビールと野菜炒めでこんなお金掛からないですよ。940円…。

 

行っちゃったね...。

婆ちゃん、これ、1万円どうする?

 

あぁ、あの人が吐き捨てた「食べログに書くからな」ってのはね、気にしなくていいよ。うちみたいな中華料理屋だと、常連のお客さんの誰一人見てないから。

なんなら「そんなひどい店なら行ってみようぜ」って一見さんが来て少し忙しくなるかも。

 

あ、だとさぁ、婆ちゃん。あの人神にもっとも近付いた男なのかもしれないよ。

ビールと野菜炒めだけで一万円置いていってくれたし、新規のお客さんも呼び込んでくれるかもしれないし。

どうする?

一応だけど、飲み残しのビールと食べ残しの野菜炒めに、手を合わせとく?