いわにし日記

「いわにし」の取るに足らない日常や思いつき

イブイブの言い訳

金網に肩をぶつけながら歩く。最寄駅からアパートまでの用水路沿いの道をカシャン、カシャンと大きな音をたてながら歩く。

 

目が覚めた僕は異変に気がついた。なんださっきの夢は?という感想より先に、まず頭が痛い。

頭痛の痛さではなく、後頭部そのものが痛む。ずきずき、じんじん。二日酔いは頭蓋骨そのものを痛めることがあるのだろうか?

 

そういえばなぜ僕はダウンジャケットを着て寝ていたのだろう?

ジーンズを履いたまま寝ていることについては言い訳を探せそうだが、ダウンジャケットを着たまま寝ていることには言い訳が見つかりそうにない。

問題はそれだけではない。何故アパートにいるのかがわからない。僕は(大学の)ゼミの同期と渋谷にいたはずだ。

 

夕方に発表会が終了して、夏に始まったゼミのグループ課題に区切りがついた。ついたのは区切りだけで、解決はしていない。だけど、もういい。これで全ては過去のことだ。

解決よりも解放の方が重要なのだ。この地獄のような日々から、この地獄のような不仲の日々から解放されるのなら、課題の解決なんて心底どうでもいいのだ。

 

男3、女2が僕の(所属させてもらった)グループの構成だった。2人の男子が優秀だったので、女子と僕は少し下がって三歩後ろを歩き続けた。

 

課題解決に向けて前進する意欲のある人(2人)と、従う意欲のある人(3人)のグループだったので、人間関係については基本的にうまくいっていた。

 

発表会が迫ってくるにつれ、なかなか解決に向かわない課題が、少しずつグループの空気を変えていった。利口でない犬を散歩させるように、少しずつ苛立ちが募っていく。

亀裂が決定的になったのは発表会の前日だった。こういう模様だから、と言い張ることができていた稲光ラインも、ぱっかり2つに割れてしまっては言い訳のしようもない。

 

男グループと女グループ。そして私。

幸か不幸か、男グループと女グループどちらともそれなりの仲の良さを保てていた。そしてどちらにも拒まれてはいない状況だった(積極的な誘致はされない)。

 

19時過ぎ、大学構内のコンビニに女グループと行く。道中男グループの悪口を言い合い、今後の不安を分かち合った。

気不味さを緩和するために「奢ってやるよ」と言った僕に、遠慮しながら飲み物だけを選んだA子と、遠慮はあるんだろうけどまあまあちゃんと飯を選んだB子。同じように胃が痛くても、戦い方は人それぞれなのだ。

 

21時過ぎ、大学を出てリーダーの家に場所を移すことになった。男グループだけで続きを行う。一応交わされる別れの挨拶が、そのまま最後になりそうなほどの、一応感。足を踏み入れてしまったのは月9でも逆転不可能な男女の物語。ラブストーリーはおろか、仲直りすら突然には起こりえない(実際3ヶ月くらいは不仲が続いた)。

 

発表会、食事会、2次会。

癒しきれないほどの傷を発表会で負うことになってしまったが、それでも気分は落ち着いていた。安堵の波がどっと押し寄せる。不仲は解決していないけれど、悪化させる原因は摘出された。あとは自然治癒を信じるだけだ。

 

解放された喜びは2次会のカラオケで出現する。

ポニーテールとシュシュ(AKB48)を同期が歌ったとき、最後のLaLaLa〜の部分をみんなと一緒に手を振って盛り上がったのだ。いつもだったら絶対にやらない(恥ずかしくてやれない)。

LaLaLa〜の手の動きは、完全に大黒摩季の「ら・ら・ら」だったけれど、ひらがなの「ら・ら・ら」そのものだったけれど。

 

手を振り終わったのだろうか?曲は終わったのだろうか?

ダウンジャケットを脱ぐのは後回し。2次会に参加していた同期に一斉にメールを送る。

 

返信は早かった。クリスマスイブだというのに、連絡を待っていたかのような速度で返信が続いた。文面を見て、返信の早さに合点した。そして、点と点が繋がり線になった。

 

ゲロを吐く。女子のコートにゲロを吐く。立った状態から真後ろに倒れ、アスファルトの地面に後頭部を打ち付ける。帰りの電車では急に関係ない駅で降りて改札を出てしまう。そのせいで疲れ果て、デートにも遅れる。

 

ダウンジャケットとジーンズを着用したまま寝ていた理由がわかったし、金網に肩をぶつけながら歩いたことが夢でないこともわかった。記憶を失い多くの迷惑をかけたことも、後頭部の痛みの理由も。

 

もともと飲みに行ってもほとんど飲まないでいたけれど、あれ以降はさらに飲まなくなった。本当に反省をした。

 

酔って覚えていない。これが許されるなら、「カッとなって、つい」「我慢できなくて、つい」も許されていい。この2つだけは許されないなんてフェアじゃない。酔って覚えていない、も許されないのがフェアってものだ(そもそもが全部ダメなこと)。

酔って覚えてない、は免罪符にはならない。それで片付けられると思っているとしたら、それこそ罪深い。

 

記憶を無くした時の自分がどんな様子だったのか、聞けば聞くほどに申し訳なくなった。

怖いもの見たさ、臭いもの嗅いでみたさもあって事細かに聞きはしたが(お陰でお詫びの金額は右肩上がり)普通に引いた。

自分のことだとわかって話を聞いている僕が引いているのだから、捨てずに介抱してくれた同期達には感謝しかない(謝罪は常時)。

 

あの日のことで聞けずにいることが一つだけある。

誰か見た人はいるのだろうか?見てしまった人はいるのだろうか?僕のおちんちんに装着されていた包茎矯正の器具を見てしまったという人はいるのだろうか(後々メスがインしました)。

真っ直ぐに立っていられなかったくらいだ。一人でトイレに行けたとは思えない。

 

もしも見てしまった人がいるというのなら、お願いがある。とっても簡単なことだから大丈夫。言い訳をしてほしいだけなんだ。

 

酔って覚えていない。

 

大丈夫、責任を持って免罪符にするから。この件についてだけはそう言ってくれないか?