いわにし日記

「いわにし」の取るに足らない日常や思いつき

ぎりぎり、ぎしぎし

ぎりぎり、ぎしぎし。

ぎりぎり、ぎしぎし、ぎりぎり。

ぎしぎしぎしぎしぎしぎし。

 

歯ぎしりが止まらない。

 

結構大手の企業に就職したバイト先の大学生に初任給と各種手当てを聞いて、ぎしぎし。地元の同級生が家を建てたと聞いて、ぎりぎり。マックで自分の前のお客さんが「ポテトあげたてで。あとバーベキューとマスタードのソースも一つずつ頂戴」と言っているのを聞いて、ぎりぎりぎしぎし。

 

最初の二つのことは別に腹が立たないけれど、最後のマックのやつは無茶苦茶腹が立つ。ソースをもらうこともそうだけど、ポテト揚げたてで、は絶対に許せない。

 

ポテト揚げたては指定しちゃダメ。

 

痴漢、暴力、薬物、ポテト揚げたて指定。

ダメ、絶対。

 

肩を並べてるくらいのダメなこと。追加料金を払うならまだしも、定価購入で揚げたて指定は絶対にダメ。

 

家電量販店の値切り交渉と同じく、声のでかいやつらの、言えばやってもらえるよ、はどうも受け入れられない。嫌い。言えないから余計に嫌い。奥歯を強く噛んでしまう。

 

僕は睡眠中にものすごく歯ぎしりをする。マックでする以上の歯ぎしりを日常的にしている。

 

2年前、初めてマウスピースを作ってもらった。虫歯治療で訪れた歯医者で睡眠中の歯ぎしりを指摘され、作ることを勧められたのだ。

 

君、歯ぎしりしてるでしょ。結構削れてるからマウスピース作ったほうがいいよ。

今はまだ残っているけど、そのうち歯の溝がなくなって、食べ物を磨り潰すことができなくなってしまうよ。

自覚はあるでしょ?だったらさ、保険も効くし一回作ってみたほうがいいよ。

 

先生の話を色々と聞き、マウスピースを作ることにした。素材はハード・ソフトがあるそうだが、こちらの歯医者ではハード一択(じゃあなんで説明したの?)。

日常的に睡眠中の歯ぎしりをする人がソフトで作っても、どうせすぐに穴が開いて作り直すことになるらしい(そういうことね)。

 

チューインガムのような食感のなにかをガブリと噛む。そのまま5分ほどぐっと噛み続けて歯型をとり、マウスピースを作る。

1週間後に再訪をしてマウスピースを口にはめる。自分の歯型を取って作っただけあってピッタリと合う。

 

ガラスの靴に足がピタリと合わさったシンデレラは、この後王子様と幸せに暮らすことになりました。

マウスピースに上の歯がピタリと合わさった頭皮の毛穴が死ンデレラは、アラフィフの歯科医師様に下の歯との噛み合わせを調整するために、マウスピースを何度も何度も削って微調整をしてもらう。

 

虫歯治療よりもよっぽど多くの時間がかかったが、そのおかげで装着中の違和感はかなり軽減された。

 

完成したマウスピースには何箇所か印がつけられたいた。削って微調整をしながらつけたようだ。

印の付いている箇所は、歯ぎしりをすると擦れてしまう部分らしい。消えないように気をつけてください、とのこと。

 

起きた時に印の擦れ具合をみて、自分がどれくらい歯ぎしりをしているか把握をすること。

なるべく擦れないように意識すること。その為には、部屋の目立つところに「歯ぎしり厳禁」と大きく書いた紙を貼って、寝る前に必ずみて意識を強くすること。

 

顎周りの筋肉のマッサージについても説明をされたが、特に念を押されたのは意識付けの方だった。

 

普通レベルの歯ぎしりだと、印が消えてしまうまでに1週間から10日程、マウスピースに穴が開いてしまうまでにおよそ1年。

これが目安らしい。

 

目安より、いや、せめて目安の日数までは消えないように頑張ろうと思った。

ルーズリーフにマッキーで、赤のマッキーの太いほうで「歯ぎしり厳禁」と書き、エクスクラメーションマークを2つ添える。

 

風呂上がり、先生から教わったマッサージをして顎周りの筋肉をほぐす。ルーズリーフに書かれた「歯ぎしり厳禁!!」の文字をしっかりとみて、今晩のミッションを確認する。

 

眠りから覚めた僕は、洗面所に向かい、マウスピースを外す。

砂浜に書いたI love youが波にさらわれ姿を消すように、夜明けのマウスピースには印が何一つ残っていなかった。そこにいくつもの印が存在していたことを誰が信じるというのだろう。

 

歯ぎしりをする人でも普通1週間は消えない印を、一晩で全て消してしまった。自分がどれくらい歯ぎしりをしているのかを理解することができた。

 

擦れた…?と疑うことすらできなかった。思ってたほど歯ぎしりしてなかったね、と安心することもできなかった。

 

そもそもあった…?しる…し?

とぼけてみるにはそうするしかない。しかし、そのとぼけ方は紛れもなく知っている人のとぼけ方なのだ。

 

2ヶ月後には奥歯の部分に穴が開き、3ヶ月後には割れた。

歯医者に行き、もう一度マウスピースを作ったが、2度目も同様。儲け話を持って近づいてきた美人が契約の翌朝には連絡がつかなくなるように、印のついたマウスピースも装着した翌朝には姿を消している。

またもや3ヶ月でマウスピースは根をあげた。

 

3度目は作らなかった。その頃には唇のフォアダイスがひどくなっていたのだ。

半年で3つ目のマウスピースを作るより、この数ヶ月でフォアダイスが一気に増えた唇を見られる方が恥ずかしかった。

恥じらいが歯ぎしりの実害を上回った。(フォアダイスの実害が上回ったとも言える)