いわにし日記

「いわにし」の取るに足らない日常や思いつき

その概念は受け入れられない

そう、もうね2ヶ月くらい前から本格的になってきて。

ついにジムに入会するとこまできちゃったんだから。週に2〜3日仕事帰りに通ってるみたいよ。トレーナーさんがついてくれて、2時間くらいみっちり鍛えてもらってるんだって。

 

そうなんだよ。いや、そうなんだよ。マジで。

それは困ってんの。被害出てんのよ。

わかる?

そう!

腹回り、顎まわり、すっきりげっそり。

俺なんか一回もジム行ってないのに体重5キロ減ったんだから。

もうね、家で一緒に食う飯はサラダばっかり。

テーブルの上がね、もうすっごい緑なの。茶色い景色が懐かしいよ…。

筑前煮の中の鶏肉だけよ、我が食卓の美しき茶色は。トンカツとか唐揚げとかさ、茶色くてカロリーの高いものを晩飯に食いたいんだけど、なかなか…。俺だけ別に用意して食べるってわけにも行かなくてさ。

 

今日お前を誘ったのはさ、その辺のことも含めて相談したいっていうか、愚痴を聞いてもらいたいというか。

まぁちょっと話聞いてくんねぇかな、と思って。

別に意見くれとかじゃないし、俺が正しいよな?ってそういう同意のカツアゲをするわけじゃないからさ。

完全にこっちの都合だから。ちょっと誰かに聞いてもらわないと俺がどうかなっちゃいそう、ってだけの話だからさ。

 

えーと、お前はどこまで知ってたっけ?俺と彼女の付き合いについて。

あー、そうそう。半年前から同棲していて、一応向こうの両親に会ったこともあって、まぁ時期が来れば結婚するだろうな、って。お互いそう思ってる感じでさ。

 

あー、違う違う彼女の浮気じゃない。ないと信じてるけど、そこはもうあったとしても諦めているというか。

変な話、俺とそういうこと出来たってわけじゃん。変な話。

で、俺と出来たってことはそりゃあ他の男と出来て当然だろ、って思ってんのよ。

なんならもう「する・しない」は別として、「出来て当然」の話なのよ、これは。

お前さ、ザリガニ食える?

無理なのね。

じゃあさ、海老は?伊勢海老だったら?

そういうこと。

ザリガニ食えたら海老は食えて当然だし、伊勢海老だったら尚のこと、ってね。

 

それがね、金でもないし、向こうの両親の反対でもないのよ。

あ、ちょっと待って。なんかお前誤解してるかも。

俺ね、別れるってとこまでの気持ちはないのよ。結婚を考え直すってほどでもなくて。

でも、よく聞くさ、マリッジブルーっていうの?本当にこの人でいいのかしら、みたいなやつ。あれに近いものはあるのよ。

 

さっきの話に戻るんだけど、彼女さ、2ヶ月くらい前から本格的になったのよ。食事に気を遣って、ジムで鍛えて、どんどんストイックになっていくのね。

で、そのことがなんだか自分の中でもやもやとしていて、日に日にその存在感が増してきてて…。

あ、そっちではないのよ。このままストイックな生活を続けられたらついていけない、ってことではないのよ。

もやもやしているのは「きっかけ」の方。ストイックな生活を始めるきっかけ。

彼女、中村アンに憧れてストイックな生活を始めたんだよ。

 

由々しき問題だろ?

別れるってとこまではいかないし、結婚を考え直すってとこまでもいかないけど、無視できないだろ?

そうだろ?

だよな、わかるよな。お前もこの感じわかるよな。

あ、え?

あれ?

なんか足並み揃ってない感じだな。

ちょっ…そんなこと言うなよ。中村アンに憧れてる女にろくなやつはいない、ってお前。それは決めつけがすぎるぞ。

俺が言いたいのはそういうことじゃない。

 

いい?大前提として中村アンをディスる感じではないのよ、俺が言いたいのは。

確かに、テレビ出始めたときはサバサバと失礼を勘違いしたようなよくいる口の悪いタレントだったかもしれない。でも今やカリスマだからね。

お前みたいなバラエティで見てた頃の記憶で捉えている人にはわかんないかもしれないけど、今やカリスマだからね。

完全なカリスマ。

30前後の女子でもママでもない適度に金を持った自分磨きが趣味の女たちにとっての憧れそのもの。

 

わかるよ、お前の気持ち。

でもさ、悔しいけどさ、そもそもが美人で美しさを維持するための努力を惜しんでいない中村アンを、どこをどうやったってディスることなんてできやしないんだよ。

アスリートがトップフォームを維持するのと同じだもん。

憧れている女たちをディスるのも同じだからな。

 

俺だってさ、自分の彼女がこうなるまではお前と同じ意見だったよ。中村アンに憧れてる女にろくな奴はいないって。

でも、この2ヶ月の間に運動と食事で健康的に痩せていく彼女の姿を見ていて思ったんだ。中村アンに憧れてる女をディスってるこっちの方がよっぽどダサいって。

彼女の努力を間近で見てそう思うようになってきたんだよ。

 

実際、可愛くなってるしね。2ヶ月前の彼女のことだって可愛いと思ってたけど、悔しいかな今の彼女の方が可愛くなっちゃってんのよ。

自分の彼女のことこんな風に言うの恥ずかしいよ。

でも言わないと。

お前みたいなやつ世の中にはいっぱいいるからさ。中村アンに憧れてる女にろくな奴はいない、って偏見を持ち続けている奴。そういう奴世の中には大勢いるから。

 

あぁ、ごめんごめん。

そうだよな、じゃあなんでもやもやしてんだよ、って話になるよな。

えーと、今の俺は、中村アンのことも、中村アンに憧れてる女のことも肯定できるのよ。

でも、「中村アンに憧れてる女」っていう概念についてはどうしても肯定できないのよ。

なんというか、その…わかるだろ。

俺たちの青春に甘くないただの酸っぱさをぶつけてきたものや、俺たちが人生で味わった酸いと苦いを凝縮したようなものと、「中村アンに憧れてる女」っていう概念はほとんど同じだろ。

概念を受け入れたら、今まで俺を窮屈にさせてきた全てを受け入れることになるような気がして、どうにもやりきれないんだよ…。

 

付き合わせて悪かったな。

でも話聞いてもらえて少し気が紛れたよ。

「中村アンに憧れてる」彼女は受け入れられるのに、概念は受け入れられないなんて意味わかんないよな。

え?ちょっとわかるってお前…。

なんだ、足並み揃ってきたじゃないか。

覚悟しとけよ。アマゾンからスタイルブックが届いたら、もう後戻りできないからな。