いわにし日記

「いわにし」の取るに足らない日常や思いつき

元旦の大根役者たち

「元旦からお疲れ様です。」

労いの言葉に対して、自分の心のどこかが苛立つ。

素直に受け取って感謝すれば良い。

わざわざ優しい言葉をかけてくれる人がいて有難いな。そんな人が自分の働く店のお客さんだなんて嬉しいな。

 

元旦からバイトすることにささくれだった心を優しく撫でてくれる、素敵な言葉と素敵なお客様。

年始ということで上乗せされた時給に、お客様との心温まるふれあいがさらに上乗せされる。ハートウォーミング・エクスペリエンス。

 

空の青さ、星の瞬き、波の音、花の香り。

どこからか流れてくるカレーの匂い、つまみ食いを叱る声、元気よく響く「おかわり!」、空っぽの鍋。

Tシャツについた醤油のシミがミッキーマウスに見えなくもない。ATMで三万円引き出したら全部ピン札だった。見てみて、このバッグ、ヴィトン風。

 

価値は心で感じるもの。心が決めるもの。

値札に並んだ0の数で決まるものではない。

 

それは、あなたを思いやる気持ちからかけられた言葉。「元旦からお疲れ様です」の一言は心からの労いの言葉。

 

がんたんからおつかれさまです。にやにやしながらいわれました。あきらかにとししたのにんげんに。

 

おじさんやおばさんに言われるのなら、素直に受け取ることが出来ただろう。労いの言葉をかけて貰った、心が温かくなった、と素直に思うことが出来た。

素直に受け取ることができなかったのは、明らかに年下の20歳前後の若者だったからだろうか。にやにやしながら言われたからだろうか。

 

自身の苛立ちを彩る言葉として「明らかに年下」という表現は都合がいい。苛立ちの根拠としても十分な力を持つ。

 

明らかに年下のお客さんから、会計後に礼を言われることは普段からある(私の接客レベルでは多くはないけど)。普段はなんとも思わないし、なんなら年下だとしても嬉しいと感じている。元旦に限って苛立つというのは考えにくい。

 

苛立ちの原因は「にやにや」の表情だ。あの表情がニュアンスのほぼ全てを決め、受け止める側の態度を決めた。

 

えー、すごい可愛いじゃないですか?

モデルが女芸人を褒めているよ。

 

美味しい、プロが作ったみたい!

外食しかしない金持ちが料理上手を褒めているよ。

 

さすが先輩!やっぱ何でも知ってますね。

後輩の大学生がベテランのフリーターを褒めているよ。

 

言葉通りに伝える気持ちがあるならば、あなた方は大根役者。自分の方が上の立場だと思っていなければ、その言葉をその表情で発することなど出来やしない。

憧れや尊敬がちっとも含まれていないんだもの。その表情がその言葉を、その言葉の意味通りのニュアンスで伝えるには無理があるのだ。

 

年明け早々嫌味を言わなくたっていいのに。

あなたお客さん、わたし店員さん。

引き摺り下ろすも何もそもそも下じゃないか。正月からシフトに入っているわたしと、外食しているあなた。

正社員の雰囲気がないから、あいつフリーターだろうから、とどめをさしてやろう、ということだろうか?いたずら心だろうか?

 

あぁそう、あぁそうですか。それはそれは。

元旦からお疲れ様です。

 

大根なのはわたしも同じ、か。