いわにし日記

「いわにし」の取るに足らない日常や思いつき

コンビニ店員に少し多めの優しさを

シソンヌライブを見終わったとき、今年の盆の予定は終わった。
唯一の予定はおよそ2時間の舞台。アパートから会場までの往復の所要時間とほぼ同じ。乗り換えがうまく行かなきゃ移動の方が長時間。

都心に住みたいとは思わないけど、こういう時ばかりは、もうちょい新宿寄りに住みたいと思う。

 

僕はいつも1人で見に行くので、隣の人がペアで来ているのか、ソロで乗り込んで来ているかを気にしている。

隣がペアの日は、外れでないことを祈る。部屋でDVDでも見るようにべらべら喋るやつらがいるからだ。

 

黙れよ!とマジのトーンで言いたくなる時もある。お前ら以外も全員金払って見てんだよ、と言ってやりたいが、それは言わない。

浅黒い肌の筋肉質な男だろうと、色白でガリガリの男だろうと言わない。相手を見て言うってことはしない。

普通に笑いたいから言わないのだ。他人を注意した後にそれまで通りに笑うことはできない。

あいつ人のこと注意したくせにすげー笑ってんじゃん。そう思われるのが嫌だから我慢する。笑うのを我慢しなくていい方を選ぶ。

 

今日のライブは隣がソロ客で、前の席の方でスマホをいじるブルーライトテロリストもいなくて環境面で満足だった。

ネタはものすごく面白かった。笑い疲れた。背中と脇の汗びっちょり。

 

帰路につく。最寄駅とアパートのちょうど中間にあるコンビニに立ち寄った。日付が変わる直前だ。

 

ミックスナッツとカップのヨーグルトを持ってレジに向かう。レジには40代後半くらいの女性店員が1人いるだけで、他の店員がいない。
珍しいな、と思った。

フリーターやら大学生やら外国人やら、この時間帯にシフトに入っているいつもの人たちが1人もいなかった。

 

いつもはもっと売り場が整っているし、店員は2人いる。女性店員の名札を見たら、店長と書かれていた。
なるほど、そういうことか。

盆休みでバイトが捕まらなくて、店長自らが売り場に立つことになってしまったのか。

 

僕は丁寧すぎる接客は苦手なので、一点一点値段を言わないレジ打ちの方が好感を持てる。合計金額だけ教えてくれれば十分なのだ。

 

さすが店長、お客さんの心理を完璧に理解しているんですね。誰も喜ばない部分については、マニュアル無視のその姿勢、尊敬します。

 

レジに来た僕を迎える態度から少し引っかかっていたけれど、店長の接客には心がなかった。誰も喜ばないマニュアルと一緒に、人と人における必要温度みたいなものも一緒に無くなっていた。

丁寧すぎる接客とは完全逆方向で、正直なところ丁寧さのかけらもなかった。

 

なにかをごにょごにょと言ったのは聞こえた。普通の店員のタイミングで考えれば合計金額を言っているはずなので、レジの表示を見てお金を用意する。ごにょごにょ言ってた何かが悪口でなければいい。
どうせ家帰って1人でチンした飯食って寝るんだろ、みたいな独身男をディスる内容でないことを祈る。

 

ヨーグルトのスプーンは入ってないし、終始好感の持てない接客だったけど、晴れない気分を押しのけて余るほどの、おばさんはおばさんで大変だな、という気持ちになった。

 

自分が接客業で働いた経験がなかったら、文句の一つも言ってやりたい。その態度なんなんですか?って。
でも接客業で働くと、悪意があってそうしてるわけじゃないなら文句を言うのはかわいそうだ、と思うようになる。

 

大変ですよね、嫌なお客さん多いですよね。あいつら何なんですかね、必要な商品代金を払っただけなのに偉そうにしちゃって。

 

欲しいものがあって勝手に店に来たくせに、こっちは客だぞ!って完全に頭おかしいですよね。

 

釣りをもらい店を出て、アパートに向けて歩き始める。


スプーンもらってもいいですか?
そう言ったら、あのおばさんはさらに不機嫌になっていただろう。こっちの主張が正しいかどうかじゃないということを、僕は経験的に知っている。

 

スプーンもらってもいいですか?

スプーンください。

スプーン入ってないんだけど。

スプーン入れたの?

スプーン入ってますよね?

 

後者になるほど腹が立つ。
スプーンが入っていないのをわかっていて、入れたの?入ってますよね?と言ってくる客をスキャナーでぶってやりたいとバイトしていた大学生の時に何度思ったか。


付属品じゃねぇぞ、サービス品だぞ!

 

おばさん店長がスプーンを入れ忘れたことを指摘することが目的ではない。スプーンが欲しいだけ。ヨーグルトを食べるスプーンが欲しいだけ。
でも言わないでおく。家に帰ればスプーンあるし。

 

入れ忘れた店員が悪い、指摘する客が正しい。たしかにそうかもしれないけど、心がささくれだっている時には何か言われるだけで不機嫌になってしまう。
店長はささくれがべろんと剥けてふてくされていた。血が滲んで、しみて痛い状態だったから、何も言わずに店を出ることが僕にとっても一番不快感がない状況だった。

 

契約する時にどんなうまい話をされたのだろう。立地と客層の資料を渡されて、アルバイトを確保しておけば、あとは勝手に利益が出ますよ、って話をされたのだろうか。

 

不労所得万歳!
家賃収入みたいなもんとして語られるんだろうな。

店はそれなりに繁盛している感じだけど、不労所得の大前提となるアルバイトの確保が難しいのだろう。


僕が大学生の時もそうだったけど、シフトが埋まらない日は、本当に埋まらない。いつでもシフトに入ってくれるフリーターがこの日に限ってどうしても無理って、状況になったらおしまい。最初の候補であり最強のカードであるフリーターに断られて万策尽きる。

あとはもう、店長が全て穴埋め。

店長はオーナーの奥さんなんだろうな、たぶん。オーナーはオーナーって名札に書いてあるはずだから。

 

50の手前で深夜にワンオペ。

物件を買い上げない分アパート経営よりもリスクが低いですよ、撤退の余地が残せますよ、なんてうまい話を聞かされていたのに、蓋を開けてみれば、朝勤が来るまでワンオペ。


当時僕も感じていたけれど、深夜に接客するのって、体力的な疲労とは全然違うすり減り方をする。ささくれだった心を勤務中に治癒するのは不可能。

 

あの態度はさすがに…って思うけど、大変だな、って。こんなはずじゃなかったんだろうな、って。

 

僕は言わずに(言えずに)店を出たけど、気を晴らしてから店を出るべくクレーム言って来るやつは多いだろう。スプーンだけじゃなくて、謝罪の言葉も貰って帰ろうとする。

サービス品だよ、付属品じゃなくて。


深夜のシフトが埋まらない日が増えたら、勤続疲労でもっとふてくされていくんだろうな。事情を知らないお客さんともっと険悪になっていくんだろうな。

 

ちょっとだけ、ふてくされ接客の最終形態に興味あるけど、そうならないことがみんなにとって良いことだから、嘘嘘嘘、って否定しておく。

大変だな。こういうのを考えると、ただの雇われの立場は気楽に感じる。


自分の立場からの考えだけで、私たちがいなきゃお店回りませんけどね、って腹を立てることはできる。それは間違ってはない気もする。

だけど何か引っかかるものはある。立場が入れ替わったときに、相手が今の自分の態度でぶつかってきたとしたら…。

 

知らない、考えない、想像しない。

自分の都合で振りかざす正義ってやつは優しくないなぁ。