いわにし日記

「いわにし」の取るに足らない日常や思いつき

ハロウィン平日ナイト

午前3時、深夜の馬鹿力を聴き終えた僕は近所のコンビニにいた。

 

お目当ての品は、ホットのカフェラテと、くるくるバタースコッチ。僕の中でセブンイレブンの美味しいパンといえばこれ。

色々と美味しいパンはあるけれど、僕の中ではくるくるバタースコッチが一番。

 

くるくるバタースコッチは、口に入れたいパンであり、口ずさみたいパンでもある。ペディグリーチャムと同じ。

口馴染みの良さは味だけにあらず。語感にもあるのだ。

犬にとってのペディグリーチャム。ワワワヲーン、チャム(ん?最後チャムって言ったぞ。)。

いわにしにとってのくるくるバタースコッチ。ワヲワヲワオー、スコッチ(ん?最後スコッチって言ったぞ。言えるわい、人間だもの。)。

 

売り切れでがっかりした気分の時に、口ずさむ。

くるくるバタースコッチを買いにきたのに…くるくるバタースコッチが食べたくて部屋着から着替えてきたのに…。

恨みつらみの主語がくるくるバタースコッチであることがアホらしく、がっかりとした気分はすぐにどこかに消えて行く。

 

一口目のインパクトやパンとしての華やかさはない。だけど、くるくるバタースコッチは食べ終わるまでずっと美味しい。僕にとっての価値はここにある。

 

華やかでインパクトのあるパンのなかには、一口目はすごく美味しいのに、残りの3分の1くらいはちっとも美味しくないやつがたまにある。美味しいは美味しいけど、もったいないから食べているだけで、心はもう色を失っている。

 

濃い、くどい、重い。一口目の感動と興奮が一転、後悔へと変わる。試着室マジック。

店員の口車に乗せられないように注意深く。鏡に映る自分の姿を何度も確認をする。自分の納得を基準に買ってきたのに、なんで?なんでこんなものを買ってしまったの?

 

渋谷が軽トラなら、我が近所のコンビニは鍋蓋。ハロウィンはあらゆるものをひっくり返す。イベント帰りのルイージが、おでんの鍋蓋を床に落とした。

 

平日の深夜3時。どこで何の?と疑問に思うが、一応都内。どこかでハロウィンのイベントが開催されていたのだろう。

ピンクのポロシャツを着た浅黒い肌の男とルイージの仮装をした派手な女が、店内を大声で歩き回る。

 

自営業で成功して同年代のサラリーマンより稼ぎの良い男と、一回り若くて派手な女。接客のバイトをしていて一番嫌な組み合わせ。

 

店員さんが無事でありますように。この男は「自営業で成功して同年代のサラリーマンより稼ぎのいい男」の仮装をしているだけでありますように。

 

レジに行くのをやめにして、様子をうかがう。僕は買い物客の仮装をしてイベントを楽しむことにした(地味ハロウィンってやつ)。

 

くるくるバタースコッチとカフェラテだけのつもりだったが、買い物かごにポテトチップスやミックスナッツを入れる。イベント参加料として追加購入。

 

店内のルイージが立派に蓄えていたのは髭ではなく胸だった。

ざっくりと大きく開いた胸元。石を落としてもなかなか地面にあたる音が聞こえないだろう深い谷間。

それを男の腕にぐりぐりと押し付けて大声で喋っている。品があるとは言えないが、エロい。

 

派手なものが観衆を引きつけるのはこの世の常。品がないとか小さなことを気にするな、器が小さいぞ。

 

鍋の上に置かれていた蓋を勝手に開け、勝手におでんをよそい始める(ここのコンビニは店員さんに注文してよそってもらう方式だ)。

女のしゃべる声は大きいが、鍋蓋が床に落ちる音も負けじと大きい。

 

色々気にした方がいいんじゃないか!勝手によそうことも、蓋を落としたことも、床に落ちる音も、気にしないで済ませるにはサイズが大きすぎるぞ。

落とした蓋を放置したまま、仲良くおでんの具を選んでる場合?

 

「いつもはチビがいて、食べたいものを食べたいだけ選べないから、今すっごいテンション上がってる。」

 

おいおいおい、子供を家に置いて平日深夜にハロウィンパーティーなの?そっからの(おそらく)旦那ではない男と朝帰りかよ。

 

事情は色々あるだろうから下手なこと言えないけど、どの事情だとしても蓋は拾って謝りなよ。

すみません、うちセルフじゃないんで、って鍋の前に来た店員さんに不満顔で器とトング渡すのもよくないよ。どの事情だとしてもそれは良くないよ。

 

2人がレジ前でおでんを選び出すのを見て、僕はレジに並んだ。買い物客からレジ待ち客へと仮装を変更する。

ここの店は深夜帯にワンオペなので、レジ待ち客の位置が観察のベストポジション。

 

おでんを器一杯によそってもらい、2人は会計へと移行した。支払いは女が行うらしい。店員さんが商品をスキャンしている間に、財布を取り出した。

スカートを捲り上げ、パンツとストッキングの間から。

 

エっ…ロクない。全然エロくない。品がなさすぎて引いた。

エロい、がただの下品へと転じる。

 

当然、お釣りをもらう時に礼を言うことはなく、蓋を落としたことの謝罪もない。大きな声で会話をしながら2人は店を出て行く。

出入り口までの短い距離の間にフルボリュームを取り戻す。

 

かごの中のくるくるバタースコッチに目をやる。僕はやっぱりこっちだよな。

自分の大切にする価値を再確認した。