いわにし日記

「いわにし」の取るに足らない日常や思いつき

3→1で0が確定

バリカンを新調した。

アマゾンでポチり。半日後には手元に届く便利な世の中。

今使っているバリカンは購入してからまだ1年経っていないはずだ。

アタッチメントは壊れていないし、バッテリーの持ちもまだ衰えてはいない。当然刃の切れ味も落ちてはいない。

現役バリバリ。

チーム事情で解雇される悲運のスラッガーさながら、第一線を張れる実力がありながら今のバリカンは引退を余儀なくされた。

事情が事情なのだ。僕の頭はすでに、3ミリのアタッチメントでは禿げが隠せない状態になっていた。

 

そもそもの話、僕は禿げを隠すための坊主ではなかった。

中学・高校の部活からの坊主で、いわば生え抜き。抜けてばかりで生えてこない頭で何を言ってんだ、って話だが、坊主としては生え抜きだ。

自分の坊主が纏うニュアンスが変わってきたのは21歳のとき。

就職活動のために数年ぶりに伸ばし始めてみるとどうも様子がおかしい。つむじ周りが妙にスッキリしている。

間引きを頼んだ覚えはどこにもなかった。

以降、年齢を重ねるごとに加速度的に間引きは繰り返され、今では全体的に間引かれた上に局所的に焼け野原になっている。

 

「元々の坊主が禿げに隠され、その禿げを隠すためにさらに短い坊主にしている。」

今の僕のこの状態をなんと呼べばいいのだろうか?

ミイラ取りがミイラになる、ではない。言葉の響きはそれっぽいけど違う。

 

坊主が、禿げに、隠される。その禿げを、さらに短い坊主で、隠す。

 

木を隠すなら森の中…すごく良さそうだけど、これは破綻している。森は消滅し始めている。

 

木を隠すなら森の中。

禿げを隠すなら坊主の中。

 

「木」と「禿げ」、「森」と「坊主」。

同種のものの中に紛れ込ませる、という意味では成立しているけれど、対になる部分を考えると引っかかってしまう。どうしても、引っかかってしまう。

禿げを(以前と比べて)さらに短い坊主で隠す、という理屈は飲み込める。小骨は喉に引っかからない。慌ててご飯やお茶を飲み込む必要はない。

引っかかるのは、そもそも森から木が失われていったから隠そうと思ったんでしょ、という部分だ。禿げが進行しなければ坊主の長さを変えなかったんでしょ、と。

ちょっ、お母さん、救急車呼んで!ご飯でもお茶でも全然だめ。喉に引っかかった骨が取れないの。うぅ…痛い…。

 

あれだ、木のない森の中に木を隠そうとしている感じだ。

全然自然のない公園に記念の桜を植樹するような感覚。

 

3ミリのアタッチメントでは禿げが隠せない。かといってアタッチメントを外した5厘では短すぎる(話がやっと戻りました)。

1ミリか2ミリのアタッチメントはないのだろうかと検索をかけてみた結果、今使っているバリカンの備品としてはラインナップされていないことが判明。

代わりに、「ボウズカッター(パナソニック)」という製品を発見した。2~10ミリの調節可能なアタッチメントと、1ミリのアタッチメントの2つが付属している。

購入を決定するのに情報はこれだけあれば十分だった。

3ミリで隠せなくて5厘で短すぎる現状では2ミリか1ミリしか選択肢はないのだから。

 

充電をしながら説明書を読む。呼んだところで読む前の自分と何の違いも生じないけれど、一応。

何一つ学びも発見もないまま説明書を読み終えて、箱の中から2つのアタッチメントを取り出し、見比べる。

2ミリから試すべきか、1ミリから試すべきか…。

 

まずは2ミリを試して、まだ長ければ1ミリで刈り直す。これが一番無難なやり方。

最初に1ミリを試して、短すぎたな、と思ったら次から2ミリで刈り上げる。こっちはリスク管理ができていないやり方。

丸出しの頭でリスクをとって失敗した日にゃ目も当てられない。お前だよ、お前。スクリーンショットした坂口健太郎の写真を美容師に見せて同じ髪型にしてもらったお前だよ。どの顔面に乗せる髪型なのか1ミリも考えなかったのか?

 

いきなり1ミリのアタッチメントを使って失敗をするリスクは重々に承知をした上で、僕は2~10ミリのアタッチメントを箱の中に戻した。2ミリで刈って長かったときにもう一度刈り直すことの方が面倒臭かったのだ。

吉と出ようが凶と出ようが構わない。どっちみち僕の頭について興味をもっている人はいないのだし。

 

バリカンの電源ボタンを押し、頭の右サイドから刈り上げていく。

3ミリあった髪の毛が1ミリになる。

坊主から坊主とはいえ、短くした度合いでいえばロングからボブにするようなものだ。開口一番「どうしたの?(ネガティブな意味合いで)」と聞かずにはいられない大きな変化だ。

一通り刈り上げてから鏡の前に立ち、自身の見た目の変化をチェックする。

驚いた。

とってもおどろいた。

予想に反してちっとも変化がない。ロングからボブになったというのに、ロングのときと同じに見える(もしくはロングのときからボブに見えていた)。

そんなことよりも重大なことが起きていた。禿げがちっとも隠れていないのだ。

全体の長さが1ミリになっても、3ミリのときと変わらず禿げていた。目立たなくなると思っていたけど、目立ったままだった。ソースをこぼした白シャツを洗濯した後の、薄まったけどこぼしたことは丸わかりのあの感じ。なかったことにはならない妙な存在感。

 

3ミリから1ミリになっても、0ミリの部分は0ミリのまま。そんなことはわかっていたいたけど、はぁ…そうか…。

淡い期待は抱くことすらできなくなった。5厘にしたって結果は同じ。

本気で隠そうと思ったら、残る道はスキンヘッドしかないようだ。