いわにし日記

「いわにし」の取るに足らない日常や思いつき

上に読んだサバで足りない。

ある程度は把握していた。

コンビニの店員が「〜29」のボタンではなく「〜49」のボタンを押すのを見て、ある程度は把握していた。どのコンビニでも、どの年齢・性別の店員でも「〜49」。

ついつい視線はボタンを押す指先に吸い寄せられる。

 

見なきゃいいのに、気がつけば見ている。

幼馴染のあいつが教室の真ん中で他の女の子と楽しそうに喋っている姿を。退部を告げた俺を最後まで引き止めてくれたあいつがグラウンドで汗を流す姿を。国会議員の牛歩より歩くのが遅いおじいさんの姿を。

 

おい、あのおじいさん5分前に渡り始めた横断歩道、まだ真ん中じゃないか。

アリの行列はおじいさんと並走し、カルガモの親子は追い抜いていく。

渡り切るのは横断歩道か三途の川か。

 

見れば傷つくとわかっているのに、店員の指先を見てしまう。「〜29」ではなく「〜49」を押される自分は一体いくつに見えているのだろう。

「〜49」を押される自分は少なくとも「若者」のカテゴリーから外れている。

 

自分のことを若者だと思って生きてはいないけど、「おじさん」のカテゴリーに入れられると少し傷つく。

若者以上おじさん未満。

還暦を過ぎたくらいのおじさんが電車で席を譲られてキレるのってこういう感じのもっと深い傷なのかも。

 

昨日はバイトのシフトの人数が足りず、他店舗からヘルプの人がやって来た。来てくれたのはいつもの人ではなく、初めて見る人。

最初に閉店時間までのおおまかな作業スケジュールを伝える。それさえちゃんとやっておけば、あとは何も心配はない。だいたいの業務は各店舗共通なので擦り合わせる部分はとても少ないのだ。

 

休憩に入る時間がヘルプの人と同じだった。「今日はありがとうございます。」と挨拶をする。「普段はどの店舗で働いているんですか?」、「どっちの店舗のほうが忙しいですか?」など、当たり障りのない軽いお話をした。

 

「どれくらいの期間ここでバイトしているんですか?」「どれくらいシフトに入っていますか?」共通認識の浅瀬で戯れるヘルプの人と僕。

寄せた波が返す度に、お互いの気持ちがチラリ、チラリ。「黙っているのも気まずいけどわざわざ会話を続けるのも面倒くさいんだよな…あぁ、休憩時間が減っていく…」

不意に大きな波が押し寄せる。「今おいくつですか?」

 

最近は正直に答えると傷つくことが増えていた。次に聞かれる機会があったら…と温めていた形を試してみる。「32歳です」

上にサバを読む。自己申告が見た目に対して妥当になるように、少し多めに3つ。サバ・鯖・SABA。

返した波が砂を大きくえぐり取る。丁寧な言葉遣いに乗せて正直な感想があらわになる。「そんなにお若いんですね」

 

「もっと若いと思ってました」の真逆。「お若い」の響きにミスリードされてなんだか褒められたように聞こえるけれど、実のところ正面突破の「めちゃめちゃ老けてますね」だ。

「そんなに」ってことは、思っていたより結構…ということだ。

虚偽で32歳の申告をしてこの反応ってことは、正直に29歳で申告をしていたらどうなっていたことか。「またまた〜」とか言われたのだろうか。それでは「永遠の17歳」と同じフォルダに入ってしまうじゃないか。

 

自分の見た目に対して妥当な年齢はいくつなのだろう。35…より上だとするとマジで辛いなぁ…。