いわにし日記

「いわにし」の取るに足らない日常や思いつき

どうせ刺さるならバラの棘

あのー、すみません。そこの棚にある左利きのレゴブロックが欲しいのですが…。

あ、そっちじゃなくて、あの、真実の愛の右隣にある、あぁそうです、三つ編みのチョコモナカジャンボの真上の。はい、そうです、それです。

 

今更ながらバチェラー・ジャパンのシーズン1を見た。DAZNを観るために買ったAmazon Fire TVを使って視聴している。

ざっくり言うと「高学歴・高収入・高顔面偏差値の三高パーフェクト男性(バチェラー)を25人の美女が奪い合う」企画。

バチェラーと真実の愛で結ばれるのはだ〜れ?というもの。

 

基本的な流れ(かなりざっくり)

・初日  デート(2ショットやグループ)企画

・2日目  デート企画とカクテルパーティー(懇親会)

・ローズセレモニー(合格者発表)

上記を繰り返し、最後まで残った一人が三高のバチェラーと真実の愛で結ばれる。

 

デートは誘われた数人しか参加できない。そこで誘われなければカクテルパーティーのときしか会話の機会を得られない(ここはここでバチェラーを巡って女同士の戦い。2ショットの誘い出し合い)。

2ショットデートに誘われるとデート中にバラ(サプライズローズ)をもらえることがあり、その場合ローズセレモニーを前にしてそのステージの突破が決まる。

ステージごとに2人脱落していく(終盤は1人ずつ)。

 

私こそがバチェラーにふさわしい女。私こそが真実の愛で結ばれるべき女。

女たちは表と裏で顔を使い分ける。

「あの子は口が軽い」「あの子は嘘をつく」「あの子の余裕は何なの?」「あの子はデートに行ってもいいよ」「私より下だから」

 

「バチェラーは騙されている」「あの子の本当の姿をわかっていない」

参加者全員が犯人みたい。近隣住民としてテレビのインタビューに答える犯人。

「本当にこわいですね」「早く犯人には捕まってほしいです」

お前だよ、お前!

 

バチェラーから2ショットデートに誘われた子がいると、残りのメンバーでその子の悪口大会が開かれる。「あの子はこんなことを言っていた」「あの子はこういうところあるよね」

しっかりと手を取り合って輪になって、抜け駆けしたあの子を完全に締め出す鉄の結束。

女って怖い…と思いながら、その場にいない誰かの悪口で盛り上がるのは男女問わないことに気がつく。別に嫌いでなくてもその場のノリで悪口言うしなぁ、とも。

悪く言ってごめんなさい。

 

女同士の敵対と結束の混沌の中すごく好きなポイントは、次のデートに誘われた子があっさりと両手を離すところ。鉄の結束が崩れる度に、鎖の強さは最も弱い環によって決まる、という何かで読んだ言葉が脳裏に蘇る。

 

あのー、すみません。この間買った左利きのレゴブロックなんですけど、ちょっと思っていたのと違いまして…。

返品したいんですけど、まだ1週間経ってないんでだいじょうぶですよね。

いやいや、取り扱っていないって、だってこれこの店で買った商品ですよ。場所だって覚えていますよ。そこの棚の、三つ編みのチョコモナカジャンボの真上の、真実の愛の右隣にあったんですから。

だから、そこの棚の、あれ…。

 

25人いた参加者が20人になり、15人になり、10人になる。

2ショットデートに誘われてサプライズローズも貰っていたのになんで?みたいなことや、まぁあんまり印象に残っていなかったし、そりゃあこの人数まで来ると厳しいよね…みたいなことを繰り返しながら人数が絞られていく。

可愛い系・綺麗系が順当に勝ち上がる中、家庭的な女性(外見とは別のところに才能が豊かだったタイプの、ね。)も戦線に踏みとどまる姿に、名門私立に挑む公立高校のイメージを重ねていた。乱打線では厳しいけれど、ロースコアに持ち込めれば勝機はあるぞ、と。微妙な判定の四球の後に、もしかしたら満塁ホームランあるぞ、と。

 

顔面だけで考えればベスト8は固い(僕の好み?)と思われていた大阪桐蔭が大会から姿を消し、後を追うように日大三高も姿を消した。

波乱のトーナメントを明石商業や佐賀北の公立勢がしぶとく勝ち進む。

 

明石商業頑張れ!

佐賀北負けるな!

 

弱者が強者を倒して勝ち進む展開を期待する私の心に少しずつ、少しずつ変化が生じていく。

「うちは文武両道ですから」「1日の練習時間は3時間までと決めていますから」「ベンチ入りのメンバーを含め全員が地元出身の選手ですから」

快進撃を続ける公立高校からこぼれ始める「名前で勝敗が決まるわけじゃないから!!!」の感じ。それを見かける機会が増えるに連れて、名門私立頑張れ!という気持ちが大きくなっていく。

3年間を野球だけに捧げた彼らに優勝してもらいたいと強く願うようになっていく。

 

家庭的なタイプの女性陣がある地点から優位になり、外見に才能豊かな参加者に対して「でもバチェラーに選ばれているのは私だよ」という態度を取るようになった。

画面の前で僕は、シンプルに美人が選ばれる結末を願うようになっていった。

気持ちはよくわかるけど(僕は外見の才能に長けていないので)その感じを出されてしまうと、「そもそもの部分」が無視できなくなってくる。お前も美人と同じでバチェラーの高学歴・高収入・高顔面偏差値のカタログスペックに恋をしただけだろ、と思わずにはいられない(内面の才能にも長けていない)。

 

最後のローズセレモニーまで見終わった僕はとても気持ちがすっきりとしていた。真実の愛で結ばれたのはファーストインプレッションで決めても選ばれていたであろう美人だった。 

一通りの視聴を終えた僕は、ずっと我慢していたネット検索を行った。放送から2年弱、二人は今どうなっているのだろう?

 

エンターキー押して4秒で結末。

発達した情報社会の悲しきことよ、あっさりと破局の事実にたどり着く。タイトルを見るだけで理解できてしまう趣のなさは便利さとトレードオフした結果だ、受け入れる他ない。

あぁそうか…まぁそうだよな…。

冷静になった後の自分たちに同じ結末を迎えさせるのはなかなか難しいよな。

 

あれ?左利きのレゴブロックだけじゃなくて三つ編みのチョコモナカジャンボも真実の愛もなくなっている…。

なんで?この間棚にあった商品全部ないじゃないですか。

えっ、店員さんこの間もいましたよね?

そうですよね、いましたよね。

僕の接客してくれたの店員さんですよね?

ね、そうですよね。僕店員さんのこと覚えてますもん。

僕左利きのレゴブロック買いましたよね?

いや…って、だから三つ編みのチョコモナカジャンボの真上にあったやつですよ。真実の愛の右隣の。

返品の受付するのが嫌で左利きのレゴブロックのこと忘れたふりするのはまだわかりますけど、他の商品のことも全部忘れているって、それはちょっとやりすぎじゃないですか。

ん、ちょっと待ってください。えっ、何なんですか?

三つ編みのチョコモナカジャンボとか、真実の愛とか意味わかんないんですけど。