いわにし日記

「いわにし」の取るに足らない日常や思いつき

脇毛はたぶん、非公式

Tシャツ、タオル、Tシャツ、タオル。

人、人、人。

慣れない空間。振る舞い方を知らない空間。

 

開演までの数十分が果てしなく長く感じた。

ライブTシャツに身を包みライブタオルを首にかけた人達の中に紛れて私服のちんちくりんが1人。

 

 

僕はこの日、藍坊主のライブを観る為に新宿BLAZEというライブハウスに足を運んでいた。

 

 

ハナミドリが発売された頃から聞き続けている割にはライブ参加はとても少ない。

新木場の年末ワンマンが2〜3回。赤坂BLITZ、大学の文化祭、武道館…それからこの間の小田原。

ライブハウスのイェイイェイウォウウォウが苦手なのだ。オールスタンディングという前のめりな形式が特に。

 

生で聞きたいけどイェイイェイウォウウォウがなぁ…。

赤坂BLITZの2階席で座って見たときが個人的には一番そわそわせずに参加出来たんだよなぁ…。

 

過去の良かった記憶を引っ張り出してきて、それを今度のライブにも行かない理由とする日々。

2月の小田原のライブまでの5〜6年は全くライブに参加していなかった。

 

小田原はデビュー15周年だったから。節目のライブは特別っていうか…。

帰りの小田急線の車内で「参加して本当によかったなぁ…」としみじみと思った(そのあと熟睡→新宿)けれど、基本的には苦手意識を持ち続けたままでいた。

 

 

チケットぴあから一般発売のお知らせメールが届いたとき、やっぱり行かなきゃ、と思った。観に行かないときっと後悔する、とも。

 

シアトルに発つあいつにちゃんと別れの挨拶をしなきゃ、の感じだ。

 

いつも通り理由をつけて先行抽選を見送っていたのに、これが最後のチャンスになると思ったら「合わせる顔がないって、お前のそのプライドなんなの?」みたいな気持ちに強烈に襲われた。

会わずにさよならするなんて、後悔するのは俺の方だ。

 

燃えない化石の楽曲をどうしても生で聴きたいと思った。

 

 

一曲目の「ランドリー」の演奏が始まる。尊い、と思った。

なんだかよくわからないけれど、尊いと思った。

 

ふと、演奏されている曲とは別の曲の歌詞が頭をよぎる。

 

「何十億の愛と、それを守る摩擦が、至る所で、煙を上げてる。」

 

「沈黙」の2番の歌詞だ。

 

 

会場内の全員が藍坊主の音楽だけを聴いているわけではないだろうし、藍坊主というバンドだけを好きでいるわけではないだろう。

他に好きなバンドがいて、普段はそのバンドの音楽をもっと頻繁に聴いているのかもしれない。

僕のようにさほど音楽に興味がないのに藍坊主に偶然出会ったという人を除けば、自分の中でのアーティストの優劣というか、ランキングというか、そういう比較する感情は当然あるだろう。

 

 

なんだかんだクロマニヨンズだよね、とか。

 

最近だったらKing Gnuじゃない?

 

いやいや、米津玄師だろ、とか。

 

それがありなら私は菅田将暉!とか、とか。

 

だったらあれだ、最近話題の…ほら、あの、サブスクリプションで凄い人気の…ほら、あれ、独学バイオメカニズムみたいな名前の、あの、いるでしょ。山陰地方から出てきた4人組のピアノ弾くバンド。

 

独学バイオメカニズムじゃなくて、ほら、えーと、月末バイトずる休みじゃなくて、あのー、ほら、ヴォーカルの子が島根銀行で営業をやってたっていうさ、ね。

なんだっけ、あの、軟式…すね毛ナルシシズム的な、うーん。

あ、でも今のちょっと惜しいよね。

 

えーと、えーと、軟式すね毛ナルシシズムは結構惜しいんだよ。ね、なんかそんな感じの名前だったよね。

 

えーと、あのー、ほら、ギターの子が実家で飼ってる猫を溺愛していてさ、ベースの子は音楽の教員免許を持っていてさ、ね、そうだよね。

 

それで、あとドラムの子は中学2年のときに米津市の総体で準優勝したことがあるんだよね、剣道の団体で。

 

あーもう、ここまで来てるんだけどさ。

あ、軟式じゃないのか。

硬式だ、硬式。

 

硬式…硬式へそ毛…あ、軟式・硬式の硬式じゃないや。

字が違うんだ。公式・非公式の硬式だ。

そうだ、そうだ。

公式…公式わき毛…フェミニズム…?

公式脇毛フェミニズム、うーん…あ、来た!

official髭男dismだ!

それだ!!

 

 

あの空間には藍坊主と藍坊主を好きな人しかいなくて、誰もがあの空間で起こるすべてを楽しもうとしていた。

 

どれだけの愛があってもそれを守る摩擦はどこにも生じていなくて、だからこそ尊いと感じたのかもしれない。

 

うん、そうだ。

 

熱気に満ちたあの空間に、煙は全く上がっていなかった。