いわにし日記

「いわにし」の取るに足らない日常や思いつき

100万かどうかはだいたいわかる

ありがとうございます。またのお越しをお待ちしております。

 

宮野さん、ちょっと、ちょっと。今のお客さんすごいですよ。財布の中、宮野さんにも見てもらいたかったな。

あ、そうです。小太りで、カゴいっぱいにレッドブル入れていた人。へー、いつも大量買いする人なんですね。

 

ははっ、宮野さん、ほんと口悪いっすね。翼をさずかってもあいつの体重だと重くて飛べない…って。

なんかわかりますけど。

仮にまとめて10本飲んで巨大な翼をさずかったとしても、羽ばたくイメージが持てないっていうか。翼をバサバサやっても砂埃しか巻き起こらないみたいな、そんな感じしますよね。

むしろ定期的に顔の近くで小さく動かして、団扇代わりに使うのが1番便利みたいな。

 

いやいや、宮野さん、そんなことはどうでも良いんですよ。財布の中身ですよ、財布の中身。

見ました?

見てないんすか?勿体無いことしましたね。

凄かったですよ。もうね、嘘みたいにパンパンに膨らんでて、だけど本物でしたね。何だったと思います?

一万円の束だったんですよ。

札束ですよ、札束。確実に100万はありましたね。もしかしたら150万くらいあったかも。

そりゃあ本物の100万円の束なんて見たことないですけど、なんとなくわかるじゃないですか。

えーと…これとこれ。

こっちのアイコスの箱の厚みだと100万ないけど、こっちのアメスピの箱の厚みなら100万以上ある、みたいな。

ですよね、わかりますよね。え、宮野さんって100万の束見たことあるんですか?

うそ?え、自分のですか?

そうですよね、宮野さんのじゃないですよね。あ、すみません。なんか失礼な決めつけをしてしまいました。

 

いらっしゃいませ。

(ピッ)

(ピッ)

2点で240円です。

300円お預かりします。

お釣り60円とレシートです。

ありがとうございます。またのお越しをお待ちしております。

 

えーと…どこまで話ましたっけ。それで、そのお客さん、ラウンドファスナーの長財布を使っていたんですけど、財布の右半分が一万円でパンパンに膨らんでいたんですよ。真ん中の小銭入れ挟んで左側にはカード2〜3枚と千円何枚かって感じで。

ポイントカードで膨らんでる財布ならしょっちゅう見かけますけど、一万円札で同じ膨張率の財布なんて初めて見ました。

 

僕、なるべくお客さんの財布の中をじろじろ見ないように気をつけているんですけど、これは流石に見ちゃいましたね。理性が負けちゃいました。

「この財布をパンパンに膨らませているのは一万円だ」って認識した後はもう駄目でした。チラ見1回では終われませんでしたね。

チラ、チラ、チラ、チラチラチラチラって、意識は完全にロックオンの状態でした。何度視線を外しても一瞬で一万円の束に戻っちゃいました。

 

いらっしゃいませ。

(ピッ)

(ピッ)

はい、ピアニッシモですね。

こちらの商品でお間違いないですか?

(ピッ)

合計で711円です。

クレジットカードはこちらに差し込みでお願いします。

お待たせしました。こちらレシートです。

ありがとうございます。またのお越しをお待ちしております。

 

今のお客さん良かったなぁ。すごく色っぽくてドキッとしちゃいました。

ああいう気怠げな美人と煙草の組み合わせ好きなんですよね。なんかいいんですよね。

でもあれっすよ。気怠げな美人が煙草を吸うってパッケージが好きなだけで、実際には吸わないほうがいいんですよ。煙草そのものは嫌いなんで。

いやいや。宮野さん、そうじゃないんですよ。可愛い系の子が吸うのは違うんですよ。綺麗系じゃないとぐっとこないんですよね。

 

しかし本当に良かったなぁ。しかも谷間も少し見えてすごく色っぽかったんですよね。

さっきのお客さんの札束と同じくらいチラ見しちゃいました。

駄目だ駄目だと思っているからチラ見なんですけど、外した直後に視線が戻ってしまうのが悲しい性ですよね。

 

あー、そうだ。

さっき宮野さん銀行で100万円見たって言ってたじゃないですか。それって、どういう感じだったんですか?

はい。

あ、宮野さん銀行に両替に行ってくれてますもんね。そのときに隣にいたお婆さんが。へー。

えっ、そのお婆さん結構常連ぽくないですか?

だってたまにお金をおろしに来るだけの人とのんびり世間話なんてします?あの銀行の窓口ってそこそこ順番待ちするイメージありますけど。

定期預金とか保険商品とか、なにかしら銀行にとってウェルカムな他のサービスも契約している人なんじゃないですか?あ、だと常連じゃなくて太客ってことになりますよね。

 

はい。

はい。

あ、そういえば戻ってくるのいつもより遅かったかも。え、それと100万円おろしたお婆さんと関係あるんですか?

はい。

はい。

え…。

はい。

あー、なるほど。

う…あー、うん。いや、引いてはいないんですよ。なんというかその、まともな人間は同意しないだろうな…みたいな。

正直、すげーわかります。

銀行出るタイミングが同じでお婆さんの手提げ鞄から封筒が見えていたら、僕もちょっと後ろついていくと思います。

直前に100万おろすのを見ているわけですし。

 

そうなんですよね。わかります、わかります。

別に何しようってことでもないんですよね。家の前までついていこうとか、大通り外れたらひったくってやろうとか、そういうんじゃないんですよね。

すっごいわかります。

こんなにカレーのいい匂いがしているのに店の前まで行かないのか?みたいな感覚ですよね。店の名前くらい確かめてから帰ろうぜ、って。

何度外しても一瞬で封筒に戻る視線のために、落としどころを用意してやる感覚ですよね。

 

あの…宮野さん。もしかしたらなんですけど、あの…100万円って、おっぱいなんじゃないですかね。

えぇ。おっぱいは100万円、とも言えます。

 

あぁ、良かった。

本当に良かった。

今日のシフトが宮野さんと同じで良かったです。

自分から言っておいてなんですけど、共感されなかったらと考えるとゾッとします。保険を掛けて話し始めたとしても「100万円はおっぱい」って言った以上、共感が得られなければバイト先に僕の居場所はなくなってしまうので。

改めてお礼を言わせてください。「本当にありがとうございます。」

 

そうなんですよね。100万円とおっぱいは同じなんですよね。欲望を直接刺激するんですよね。

だから最初から表に出てこないように抑え込むのは不可能なんですよ。人間にできるのは表に出てきてしまった欲望を後追いで抑え込もうとすることだけなんですよね。降りしきる雨に濡れないように傘をさすようなもんで、降らせないようには出来ないんすよ。

なんとか理性を働かせてガン見をチラ見に抑え込んでるこちらの努力を、むしろ可愛いと思ってもらいたいくらいですよ。

 

あっ、いらっしゃいませ。

(ピッ)

(ピッ)

はい、えー、あ、はい。唐揚げ棒2本ですね。

お待たせしました。

合計562円です。

えーと、QUICPayはこちらでお願いします。こちらレシートです。

ありがとうございます。またのお越しをお待ちしております。

 

はーーーー。さっきの会話の流れから今のお客さんは反則ですよ。めちゃめちゃ緊張しました。我が事ながら接客すげー下手だと思いましたもん。メニューボードの唐揚げ棒が見つからなくて軽くパニックでした。

もうね、理性がフル稼働ですよ。軽く煙出てたんじゃないですか?

あれだけのおっぱいが手の届く位置にあって行動をチラ見まで抑え込むんですから。ガン見どころか触りたいくらいでしたもん。

実際レシート渡してるんですから触れる距離ですし。

いやーほんと、素晴らしいものをお持ちでしたよね。

 

あの…もしかしてなんですけど、宮野さん銀行の窓口でおばあさんの100万円見たときよりも理性を働かせて必死に視線を外そうとしたんじゃないですか?

だってあの人、絶対に100万以上ありましたもん。実物を見たことがなくたって、それくらいはわかりますよ。

個人的には150万あってもおかしくないと思います。

え、ちょっ宮野さん。なんで僕が童貞だってわかったんですか?